演劇が、芝居が、今、面白い。劇場という劇場が大盛況。舞台を見れば、今という時代が映って見える。おすすめのイチ押し、穴場、ひろい物−。さあ、劇場へ!。
〜『浅草キッド』初の舞台化〜 NEW!
明治座で10・11月に上演される音楽劇『浅草キッド』が発表された。芸人・ビートたけし、映画監督・北野武。その彼が青春自伝小説として書いた原作の初舞台化だ。
まだ無名と言えた青年時代、流れ着いた浅草・フランス座での下積み生活、そこで出会った師匠の深見千三郎、芸人仲間やストリッパーたちとの交流を紡ぐ物語だ。
原作と作詞・作曲はビートたけし。配役のたけし役は林遣都、深見が山本耕史。芸人たけしはどのように誕生したのか。林は脚本・演出の福原充則の演出舞台を見て衝撃を受けたとかで、「とんでもない作品への出演。最大限の敬意と情熱をもって挑みたい」。山本は「当時、武さんが受けた衝撃を、師匠役に宿したいと思います」と、2人は初共演が楽しみだという。
これまでにドラマ化、映画化されてきた作品。大阪・新歌舞伎座、名古屋・愛知県芸術劇場でも上演される。
(令和5年6月19日)
〜イプセンの傑作『ロスメルスホルム』〜 NEW!
ノルウェーが生んだ劇作家ヘンリック・イプセンは“近代演劇の父”と総称される。そのイプセンが1886年に発表した『ロスメルスホルム』。愛知、福岡、兵庫公演を経て11月15〜26日、新国立劇場小劇場での東京公演は決定した。
知られざる傑作とされるこの作品は、保守的な思想と進歩的な思想を持つ人々の対立を描いていて、近代演劇への扉を開いたイプセン作品の中でも難解な戯曲だろう。
物語の主舞台はロスメルスホルムと呼ばれる屋敷。歴史と伝統に縛られたこの場所に所有者のヨハネス・ロスメル、家政婦のヘルセット、下宿人のレベッカが住んでいる。レベッカは、ロスメルの自殺した妻ベアーテの兄クロル教授の紹介だった。
ロスメルは若き日、家庭教師だったブレンデルという自由思想家の影響を受け、レベッカはそのブレンデルの後を継ぎ、自分こそがロスメルを自由にすることが出来る、と信じている。作品の中には理性、情欲、打算、破れる均衡が潜んでいる。
出演者は主演のロスメルが森田剛、ヒロインのレベッカが三浦透子、クロル教授が浅野雅博、ヘルセットが梅沢昌代。彼らの演技力、栗山民也の演出力が試される。
(令和5年6月19日)
〜俳優座劇場が閉館へ〜 NEW!
東京・六本木の俳優座劇場が閉館となる。運営する株式会社・俳優座劇場が発表した。昭和29年(1954)に開場し、70周年に当たる令和7年(2025)をもって閉館される。
同劇場は劇団俳優座の本拠地として名舞台を多く生んできた。1980年のビル改築に伴って劇場も新しくなったが、旧劇場では仲代達矢、平幹二朗、加藤剛、栗原小巻らスター俳優が演技を競っていた。
ビル自体の老朽化、修繕費の負担や収支が厳しくなったのが理由としているが、六本木地区の再開発計画も背景にあると見られる。
俳優座劇場のプロデュース公演として同劇場での公演は今年10月に『検察官の証人』、来年3・4月に『音楽劇 母さん』などを予定している。
東京地区では国立劇場、帝国劇場、日生劇場といった大劇場の閉館が予定され、中劇場の俳優座劇場の閉館によって劇場不足が進むことになる。
(令和5年6月19日)
〜劇団四季の新作ミュージカルは?〜
「ナイチンゲールと芝居好きのゴーストのラブストーリー」。
劇団四季の新作ミュージカルである。題名は『ゴースト&レディ』。4月10日、制作発表会見が開かれた。
来年5月、四季劇場・秋で半年間上演されるこの作品。原作は藤田和日郎の週刊誌に連載された中編コミックス「黒博物語・ゴースト・レディ」。
舞台背景は19世紀のロンドン。物語はドルリー・レーン王立劇場にグレイ(灰色の服の男)と呼ばれる男がいた。彼は実は“シアターゴースト”、つまり幽霊なのだ。生前は決闘代理人だったこのゴーストが客席に現われると、芝居は必ず成功する、と言われている。
もう一人の主人公がレディ。フローレンス・ナイチンゲール。フローと呼ばれる。名前の通り、モデルは“クリミアの天使”として知られるあのナイチンゲール。2人とも実在の人物だ。登場人物はこの主役2人のほか、もう一人のゴーストやフローの両親、友人、新聞記者などがいる。
演出はスコット・シュワルツ。四季では『ノートルダムの鐘』の演出をし、これを機会に劇団と親交が深まり、今回の起用となった。シュワルツは「鼻歌を歌いながらの音楽やゴーストのフライング、俳優30人の登場など」と、たっぷりの時間をかける稽古と作品の見どころを語った。
今後は8月から9月にかけて劇団内オーディションを経て来年2月上旬に稽古開始。全国各地での上演も予定している。気になる制作費だが、『マンマ・ミーア』と同規模のようで数億を投入するスケールの大きなミュージカル作品となる。
(令和5年4月19日)
〜高齢化の熱海五郎一座?〜
東京・新橋演舞場で6月の風物詩の公演と言えば「熱海五郎一座」。三宅裕司が座長の一座は2006年に旗揚げし、2014年に同劇場に進出してからシリーズ第9弾目の今年、5月31日〜6月25日まで上演される。3月13日、出演者が勢揃いした製作発表会見が開かれた。
今回の作品が『幕末ドラゴン・クセ強オンナと時をかけない男たち』。顔ぶれは三宅を筆頭に渡辺正行、ラサール石井、小倉久寛、春風亭昇太、交互出演の東貴博、深沢邦之のレギュラー陣、そしてゲストの檀れい、ももいろクローバーZの玉井詩織が出席した。
“東京喜劇”を標榜するスーパー・エキセレント・シアターと三宅だが、確かな台本を元に粋な軽演劇によって笑いを生み出すのが“東京喜劇”だ、と思う。
三宅が出演・構成・演出の物語は、高齢者ばかりで構成された演劇集団・シルバーガイズがある日、芝居の設定である幕末へタイムスリップして起きるテンヤワンヤ、ドタバタの爆笑喜劇となる。
喉の痛みから関節リューマチが分かり、自分でパンツも履けない痛みから回復した、と語り始めた三宅は「爆笑の連続で最後、感動に持っていく」と挨拶。初参加の檀には「コントを全力で、真剣にやってもらう」と、ハッパをかけ、ラジオ番組で共演した玉井には「シリオン(ニックネーム)はボケとツッコミの両方出来る人」と、期待していた。一方で一座も高齢化が進み、「コロナに感染すれば重症化する年齢。徹底して防止する」と、本気で笑わせていた。
(令和5年3月25日)
〜新作歌舞伎で『刀剣乱舞』〜 NEW!
シュミレーションゲームの大ヒット作『刀剣乱舞』が来年2023年7月、東京・新橋演舞場で、新作歌舞伎として上演される。ミュージカル、ストレートプレイでは既に舞台化されているが、初めて歌舞伎になる。
まさにタイトル通り。戦う戦士の激しい格闘が舞い乱れる場面の連続は、歌舞伎に相応しいと言える。
発表された役者は尾上松也(37)、尾上右近(30)、中村莟玉(26)、中村鷹之資(23)の花形、若手に加えて人間国宝の中村梅玉(76)。脚本は松岡亮、演出に日本舞踊家・尾上菊之丞と松也も参加する。
劇画、アニメなどといった分野の人気作を取り込んできた歌舞伎だけに世界的なヒットを飛ばした作品は注目されるに間違いないだろう。座頭格の松也は12月に三谷幸喜の作・演出の喜劇『ショウ・マスト・ゴー・オン』に主演。来年1月は「新春浅草歌舞伎」、3・4月は新作歌舞伎『ファイナルファンタジーX』(IHIステージアラウンド東京)への出演が決まっている。2023年は歌舞伎イヤーとする覚悟らしい。
(令和4年12月13日)
〜七世中村芝翫十年祭〜
日本舞踊中村流の「雀成会」が‘七世中村芝翫十年祭’として11月27日、国立劇場で開催される。
昨年が七世中村芝翫の没後十年だったが、コロナ禍のため追善の会を延期。ようやく今回の開催となった。
門弟を始め、孫の児太郎が長唄「梅の栄」、そしてやはり孫の梅が長唄[鷺娘]を披露し、長唄「鶴亀」では八代目家元である梅彌、次男の芝翫、さらに孫の橋之助、福之助、歌之助兄弟が出演する。品格を守り抜いた七世中村芝翫の芸を伝承する舞踊会である。
(令和4年10月27日)
〜スター誕生こそ急務〜
国立劇場9月文楽公演の取材会が9月1日に行われた。同劇場は建て替え再整備のため、来年10月末をもって閉場し、再開場は7年後の令和11年秋の予定だ。それに伴い、“初代国立劇場さよなら公演”と銘打った興行が各ジャンルで上演されるが、9月文楽公演がその第1弾だった。
豊竹咲太夫(78)、鶴澤清治(76)、吉田和生(75)、桐竹勘十郎(69)という語り(太夫)、三味線、人形の三業の人間国宝4人が出席した。文楽を牽引する重鎮である。
現在の国立劇場は昭和41年(1966)に開場。?落としの時に襲名した咲太夫が「最初の2年間はお客様が100人もいなかった。でも、大変ころ合いがいい大きさの(文楽を上演する)小劇場で、それ新しい劇場でも出来ればいい」と口火を切り、それぞれが懐かしい思い出を話した。
清治は開場前の特別公演をいつも思い出すそうだ。中でも17世中村勘三郎が演じた『奥州安達原』の袖萩。清治はこの作品で9月公演に出演している。勘十郎は「父(二世勘十郎)が、立派な劇場やなーと言っていた。中学2年の時、当時走っていた都電で三宅坂に通っていました。大劇場が広いので玉男君と野球が出来るなあ、と言ってましたね」
7年後と言えば一番若い勘十郎でも76歳、最長老の咲太夫は85歳となる。新しい劇場への期待・希望について咲太夫は「私はくたびれ果てて出ることはないと思います」とキッパリ。閉館期間中、東京での公演は足立区・北千住のシアター1010を始め、上演場所を選定中している。
和生は「早め早めに演目を出すようにしないと」。文楽の常打ちは大阪文楽劇場だが、東京ではこの7年間で観客の高齢化や上演場所の分散によって観客離れの不安があり、皆がそれを心配していた。一方で、舞台機構の飛躍的な進歩も期待される。「76歳になっても、?落としに出たい」と勘十郎。咲太夫は新作と古典の両方の上演を望んでいた。
文楽離れをどう食い止めるか。課題は山積みしているが中堅の技芸者から人気者、スターを生み出すため全身全霊を全員が尽くすその一点だと思うのである。
(令和4年10月2日)
〜中村梅玉と高砂会〜
中村梅玉(75)一門の勉強会である『高砂会』の第2回が8月20・21日、東京・中央区の日本橋劇場で開催される。
門下で一番の若手の梅寿が長唄「越後獅子」、梅秋が常盤津「一人景清」、年長の梅蔵と女形の梅乃が常磐津「忍夜恋曲者・将門」を披露する。
養子の莟玉はご挨拶、そして「越後獅子」と「一人景清」の後見に当たるが、歌舞伎俳優で現在5人目となる人間国宝に認定された梅玉はご挨拶で出演する。
正しい礼儀、舞台に於ける品位、品格を大切にする故6世中村歌右衛門の教えを守り、結束して舞台を務めている一門。真夏に汗を流して稽古をしてきた成果を問う。
(令和4年7月29日)
〜松本白鸚が「菊田一夫演劇賞」特別賞〜
2021年度の第47回「菊田一夫演劇賞」授賞式が5月30日、東京・日比谷の東京会館で行われた。各賞は次の通り。
◆菊田一夫演劇大賞=「千と千尋の神隠し」上演関係者一同。
◆同演劇賞=佐藤B作。
◆〃 =土居裕子。
◆〃 =木下晴香。
◆〃 =森新太郎。
◆同特別賞=松本白鸚。
特別賞の白鸚は『ラ・マンチャの男』の主演を半世紀以上にわたり務めた功績に対しての受賞。松本幸四郎時代の1997年度・第23回には同作品の上演750回を達成した成果に対して、第25回に最優秀男優賞を受賞して演劇大賞を受けており、この大賞を受賞した歌舞伎俳優は白鸚一人だけ。また今回の特別賞もやはり初めての受賞だった。
授賞式で最後に紹介されたスーツ姿の白鸚は早足で壇上へ。深く一礼し、記念楯、副賞を受けた。その後の挨拶と質疑応答では「一番嬉しい賞です」と口を開いた。
「26の時の初演のラ・マンチャ、その前に『王様と私』でも出たが、22歳。アッ、という間に50年。ずっと私の傍にいて、支えてくれた家内の紀子にお礼を言いたいと思います。ありがとう」
「(舞台を途中で)辞めたいと思ったことは一度もございません。3歳での初舞台以来、病気や怪我があったりしましたが、私たち役者は勤めることしかありません。歌舞伎から入って、頂いた大役は試練だと思ったし、稽古も苦しかった。確かに苦しかったですよ。でも全身を突っ込んで、逆にさらにもっと苦しいことに自分を投入しました。皆さん、あるべき姿のために。それをいつも忘れないでほしいと思います」
傑作だったのが佐藤B作。芸名の由来、福島の飯坂温泉で生まれ、早稲田大学時代でのこと、渡哲也のようなかっこいい名に改名しようとしたことなど挨拶の調子が止まらない止まらない。質疑応答は時間切れでした。
(令和4年6月1日)
〜松緑、梅枝で『紅葉狩』〜
尾上松緑(47)と中村梅枝(34)は年齢がひと回り以上離れているが、知る人ぞ知る仲良し。その2人が国立劇場7月歌舞伎鑑賞教室の人気舞踊『紅葉狩』で初共演する。5月23日、取材会に出席した。
平維茂に扮する松緑は歌舞伎舞台では3度目、更級姫実は戸隠山の鬼女を演じる梅枝は初役だ。
会見の挨拶で松緑は梅枝について「性格が悪い人なので後の鬼女の方がいい」などと冗談ぽく話したものの、梅枝がまだ大学入学早々の10代から付き合い始めていて、「普段仲が良いので嬉しい共演。何でも言いたい事を言い合える、気心が知れているので、心配ありません」。さらに「芝居勘が鋭く、舞台度胸はピカ一。時には相談したり、怒られたり。頼りにする人です」と持ち上げ、相手役の更級姫が初の女形になるのも、一切心配していないという。
『紅葉狩』を初めて見たのは六世中村歌右衛門が更級姫、辰之助時代の父が維茂を演じた公演。「私はまだ10歳になるかならずの時で、父は珍しく緊張していた。大先輩の胸を借りたからなのでしょうか。キャラクターの強い役が多かったので、二枚目の役は恰好良かった。私も父と同じく髭を付けますが、芝居の場面はしっかり受け、立ち回りは派手にやる」。
一方の梅枝は美形の女形。恐ろしい顔つきに化粧する隈取りは大変でした」と笑った。弟の萬太郎や仲が良い中村歌昇、種之助兄弟に聞いたり、父の時蔵が平成3年に演じた時の映像を見て研究したそうだ。
演じるのに当たり、当初は「後をやるのは自信がなかったし、ちょっと無理」と迷ったらしい。しかし、父が二世松緑、辰之助(二世松緑)が大好きで自分も仲の良い現松緑との挑戦であり、質問をしたりする特別な思いのようだ。
見どころの一つに赤姫の更級姫では二枚扇を使った踊りがある。「これでもかと二枚扇をやりますが、扇で使う技がほとんど入っている。松緑さんの大きさに対抗できるように勤めたい」。
常盤津、義太夫、長唄の三方掛け合いによる演奏での新歌舞伎の内。松緑は長男の左近に、自身が初めてこの作品に出た際の左源太を与えた。「難しい役を息子に経験させて、これからも勉強して欲しい」と語り、「右源太が坂東亀蔵、萬太郎のダブルキャストなのも勉強になる」と話した。珍しい歌舞伎鑑賞教室での舞踊である。
(令和4年5月26日)
〜二宮さよ子がひとり芝居〜
女優・二宮さよ子がライフワークとしているひとり芝居を初めて東京・下北沢で披露する。小劇場の駅前劇場で12月11日〜13日に上演する石川耕士・作『卒塔婆小町』だ。
2017年初演のこの作品はバージョンアップした4年ぶりのもの。能で知られる演目だが、今作は島原の太夫に転生した小野小町が「蝶の道行」を踊り、マリア・カラスの「蝶々夫人」の曲を用いて演じて踊るなど重層的に構成されているという。
「芝居、踊り、書を演じてみます」。書の個展を開催している二宮は小町の和歌をしたためるなど独特の世界が描かれる。
ひと芝居では『出雲の阿国』や師匠だった杉村春子の代表作『ふるあめりかに袖はぬらさじ』といった作品を自主制作してきた。色気も華もある女優の二宮。小劇場の空間で迫力ある舞台を見せるだろう。
(令和3年11月29日)
〜『歌舞伎役者・市川雷蔵・のらりくらりと生きて』出版〜
中央公論新社から『歌舞伎役者・市川雷蔵・のらりくらりと生きて』を出版しました。今年は雷蔵の生誕90周年、初舞台から75年と言う節目に当たります。
スクリーンの美男俳優として絶大な人気を集め、「眠狂四郎」シリーズや、「大菩薩峠」などの代表作を始め多くのヒット作で知られています。現在もファンからの支持は衰えていません。
その雷蔵丈に興味を抱いたのが、映画界へ転身する以前、青年時代の早くから歌舞伎役者として注目され、勉強会「つくし会」、そして武智鉄二指導の下、いわゆる“武智歌舞伎”に参加するなど活躍していたのですが、歌舞伎役者の側面は意外に知られていない、と思ったからでした。
当時を知る俳優や関係者への取材を続ける中で新たな事実や新発見がありました。37年という早過ぎた人生を駆け抜けた雷蔵の半評伝です。
(令和3年9月30日)
〜中島裕翔がヒーターパン〜
黒木華と中島裕翔がダブル主演する『ウエンデイ&ピーターパン』の上演が発表された。東京・渋谷のオーチャードホールで8月13日〜9月5日。注目の夏になるだろう。
ウエンデイが黒木、ピーターパンが中島。タイトルにある通り、ウエンデイの視点からピーターパンを描くのが異色で、2013年にロンドンで初演されて美しい舞台が話題になったという。
美しい舞台というのはダンス、フライングや小道具美術、さらに映像を加えたフィジカルな世界になっているのが主な理由。
Hey ! Sai ! JUMPの中島は今27歳。演出するジョナサン・マンビィのコメントによれば「成熟さと少年の純粋無垢な要素を合わせ持つピーターパン役」にピッタリとか。子供のままでいたいと願う少年ピーターパン。中島は「切ない笑いや、嬉しい涙、ほろ苦さも感じられる、大人が楽しめるピーターパンという印象」とコメントしている。
ネバーランドへ旅立つウエンデイとピーターパン。衣装、フライングが楽しみだ。共演は堤真一、石田ひかり、平埜生成。
(令和3年5月3日)
〜加藤シゲアキ、キムタク超えろ!〜
NEWSの加藤シゲアキ(33)が約3年半ぶりの舞台で主演する『モダンボーイズ』の上演が決まった。東京・新国立劇場で4月3日〜16日、大阪での公演も発表された。
物語の舞台は日中戦争直前、浅草のレビュー小屋。加藤が演じるのは青森出身の学生、矢萩奏。プロレタリア革命を志すが、警察に追われて劇場に逃げ込んでくる。仕方なく道化に扮装してコーラスボーイと名乗ることになる。そして、歌を披露するのが見どころ。故郷で合唱隊だった時に歌った「My Blue Heaven」−。その後、レビューの人気者になるという筋だ。
「自分らしく生きるとは何か。情熱をもって演じ切りたい」という加藤。この役は27年前の1994年、木村拓也が主演していた。演出の一色隆司は加藤について「溢れ出るエネルギーが半端ない方です」とコメントしている。横内謙介・作の青春群像劇。俳優活動に留まらず、執筆活動にも才能を発揮する加藤が歌って、踊る−。キムタクを超えろ!
(令和3年1月29日)
〜横山裕VS松尾スズキ〜
関ジャニ∞の横山裕が松尾スズキ・作『マシーン日記』の主演が決まり、発表された。来年2月3〜27日に東京・シアターコクーン、3月5〜15日がロームシアター京都メインホールの上映だ。
横山の役は電気修理工のミチオ。この主人公は町工場に隣接されたプレハブに住んでいるが、右足を鎖で繋がれ、監禁されているという気の毒な男。小さな町工場・ツジヨシ兄弟電業を経営する兄アキトシ(大倉孝二)によって監禁されているが、壊れた機械を見ると直さずにはいられない性分だ。
「僕は演劇畑の人間ではないですが、積み重ねてきた他の経験を強みにこの作品に挑みたいです」と抱負を語る横山。演出の大根仁は「ミチオ役に選んだ横山さんはドラマの仕事で初めて会ったのが16歳くらいの時で、最近のドラマを見ていて芝居がいいな、仕事したいな≠チて引っかかっていたんです」という。
若手女優の森川葵、ベテラン女優の秋山菜津子との4人芝居の愛憎劇。横山には濃厚な情念が求められる舞台になるだろう。
(令和2年10月26日)
〜小瀧望の挑戦〜
ジャニーズWESTのメンバー、小瀧望が世田谷パブリックシアターで『エレファント・マン』に主演するというプレスリリースが送られてきた。「ヒエッ!」と驚いた。
彼が演じる青年ジョン・メリックの肥大した頭部は額が突き出していて、変形した身体には腫瘍が数多くあり、歩くのも困難なため、人に好奇の目で見られてきた。
見世物小屋にいた彼は、しかし、聖書を熱心に読み、芸術を愛する知的な青年なのだ。
演出する森新太郎のコメントによれば、特殊なメイクは用いず「身体のねじれだけで、観客にメリックを想像させなくてはならない」という。
日本では劇団四季が確か、市村正親で演じたと思うが、文学座、ホリプロなどでも上演している。私はこの作品を見るたびに、実は大泣きしてきた。
5年ぶりの舞台出演になる小瀧は「戯曲を読んでみると、僕が演じるエレファント・マンの人生はすごく衝撃的なんですが、彼の心の汚れない綺麗さ、あふれ出る知性という、そうした内面の美しさが、長年にわたってこの作品が多くの人々に愛されてきた理由なんだと思っています」とコメントを寄せ、また「全力で、全身全霊で頑張ります」と、難役に挑む意気込みを語っていた。
再び森によれば「彼の全身から発せられる知性と感性に期待は膨らむばかりだ」と、抜擢した訳にも触れている。
24歳になったばかりの小瀧にとって大飛躍へのステップになるのは間違いない。出演は小瀧、近藤公園、高岡早紀、木場勝己ほか。10月27日〜11月23日の上演である。
(令和2年8月29日)
〜演劇界、始動!〜
やっと、演劇界も本格的に動き始めた。
招待状が届いたのだ。待ちわびた第一号は6月8日だつた。
東京都による休業要請緩和新工程のステップ2に移ったのが6月1日。劇場もようやく緩和されて、そろそろかなと期待していた時期だった。が、予想していたとはいえ案内状に書かれた「新型コロナウイルス」への対策はそれぞれ、苦戦と工夫の跡が歴然だった。
例えば−。劇場側は余裕を持った座席配置をする、つまり客席数を減らす。入場時には赤外線サーモグラフィを設置。各所に消毒液を配置。洗面所に薬用石鹸を置く。観客には記入してもらった連絡先を公的機関に提供する場合がある、といった具合だ。
お客はどうか。入場時のチケットの半券は自身で切る。もぎりはお客という訳だ。さらに、場内での会話は控えてもらう。マスクは着用…。全ての公演が上記のようではないのだが、その費用、収入、ここまでに至った作業を考えると、進むも引くも苦労は限りないと想像できる。
さて、招待状の到着順に紹介する。
表現者工房プロデュース『2020チルスとマンス』 20/6/26(金)〜20/6/29(月)シアター風姿花伝
『願いがかなうぐつぐつカクテル』20/7/9(木)〜20/7/26(日)新国立劇場小劇場
『BLUE RAIN』20/7/2(木)〜20/7/12(日)博品館劇場
『殺意 ストリップショウ』20/7/11(土)〜20/7/26(日)シアタートラム
(令和2年6月20日)
〜堂本光一が菊田一夫演劇大賞〜
第45回「菊田一夫演劇大賞」が決まり、4月27日、受賞者が発表された。受賞者は次の通りだ。
◇菊田一夫演劇大賞
堂本光一(20年にわたり『SHOCK』シリーズを牽引してきた功績に対して)
◇菊田一夫演劇賞
岡本健一(『海辺のカフカ』の大島の役、『終夜』のヨンの役の演技に対して)
川平慈英(『ビッグ・フィッシュ』のエドワード・ブルームの役の演技に対して)
高橋一生(『天保十二年のシェイクスピア』の佐渡の三世次の役の演技に対して)
朝夏まなと(『リトルウィメン〜若草物語〜』のジョーの役、『天使にラブ・ソングを〜シスター・アクト』のテロリストの役の演技に対して)
◇菊田一夫演劇賞特別賞
酒井澄夫(永年の宝塚歌劇における作・演出の功績に対して)
昨2019年に上演された公演が対象だが、各受賞者は現在の“コロナ感染”の中での朗報であり、その思いは格別のようだ。
大賞の堂本光一は2017年に『Endless SHOCK』で出演者・スタッフ一同で大賞を受けていた。区切りの20年での受賞で「今回の公演では新型コロナウイルスの影響で公演中に中止が決まり、このような時にエンターテイメントで何が出来るか模索する毎日ですが、まさにこの瞬間も医療関係の方々、我々の生活を支える為に仕事に出られている方々、現場の最前線で我が身を挺して下さっています。感謝の気持ちを忘れずに、そして皆様が心からエンターテイメントを楽しんで頂ける日常が一日でも早く戻ってくる事を心から願っております」とコメントを出した。
岡本健一「演劇に対する私のこれからの行動が、今まで以上に大切なのだと受け止めています。私は生きている限り、『劇場』という果てしなく自由で特別な場所で、誇れる作品をお客様に届け続ける事を、誓います」
朝夏まなと「当たり前が当たり前じゃなくなった今、舞台に立てることのありがたさをひしひしと感じます」
(令和2年4月28日)
〜橋爪功が最優秀男優賞〜
第27回「読売演劇大賞」が決まり、2月28日、贈賞式が開かれた。各賞は次の通り。
◆大賞・最優秀男優賞=橋爪功。
◆最優秀作品賞=「Q」。
◆最優秀女優賞=神野三鈴。
◆最優秀演出家賞=松本祐子。
◆最優秀スタッフ賞=服部基。
◆杉村春子賞=菅田将暉。
◆芸術栄誉賞=「キャッツ」劇団四季。
◆選考委員特別賞=岡田利規。
新型コロナウイルス感染防止のため贈賞式は当初、予定された懇親パーティーを中止。受賞者はじめ列席者全員にマスク着用を求めた。
橋爪功は第25回に最優秀男優賞を受賞しており2度目だが初の大賞を射止めた。挨拶では「年甲斐もなく、小学校中学校に入学するような恥ずかしいようなドキドキするような感じです。多くの方から言われたけれど、家内が『本当に良かったね、お父さん』と言ってくれたのが嬉しい」とテレていた。
「カリギュラ」の演技で杉村春子賞の菅田将暉。「今だに台詞が頭にこびり付き、それだけ心に残っているんだと思う。稽古場が楽しい現場でした。心から感謝します。自分なりに楽しく有意義にやっていきたい」と、舞台の面白さを語った。
(令和2年3月1日)
〜岩井半四郎襲名〜
日本舞踊の正派岩井流宗家で女優の岩井友見(68)が11代目岩井半四郎を襲名する。父親である先代の10代目岩井半四郎が平成23年(2011)12月25日に亡くなって10年が経ち、襲名を決意したという。
先代の半四郎と言えば古い世代にとっては映画や商業演劇での活躍が知られるが、舞踊の家に生まれ、市川猿翁の弟子となって2代目市川猿笑を名乗って歌舞伎俳優としても活動し、半四郎を襲名して以降、昭和36年2月に所属を東宝から松竹に復帰。歌舞伎の巧脇役として舞台に立っていた。
長女の友見は舞踊家としての分野を継承し、今年5月2日に国立劇場で襲名披露舞踊会を開催する。
先代が創流した正派岩井流だが、岩井流は江戸期から続く名流。日本舞踊の活性化に尽くして欲しいものだ。
(令和2年1月16日)
〜紀伊国屋演劇賞〜 NEW!
令和元年の第54回「紀伊国屋演劇賞」が発表された。
◆団体賞
劇団桟敷童子=「骨ノ憂鬱」「獣唄」の優れた舞台成果に対して。
◆個人賞
村井國夫=劇団桟敷童子公演「獣唄」における梁瀬繁蔵の演技に対して。
土居裕子=俳優座劇場プロデュース公演「音楽劇母さん」における春・鳩子、「音楽劇人形の家」におけるノーラの演技に対して。
松本祐子=企画集団マッチポイント公演「ヒトハミナ、ヒトナミノ」、文学座アトリエの会公演「スリーウインターズ」の演出に関して。
広瀬すず=NODA・MAP公演「『Q』:A Night At The Kabuki」における源の愁里愛/愁里愛の面影の演技に対して。
(令和元年12月29日)
〜大竹しのぶは天才〜
大竹しのぶが演劇大賞を初受賞した2018年度の第44回「菊田一夫演劇賞」の授賞式が4月26日に開かれた。
大竹は2006年度の第32回では「スウィニー・トッド」のミセス・ラヴェット役で演劇賞を受けているが、今回は昨年11月に上演された「ピアフ」のエディット・ピアフの演技に対しての受賞だった。
スピーチでは鮮やかな和服姿で登場。「感動しています」と話し始めた。ハタチの時に宇野重吉の演出を受けた。その体験を「楽しくて楽しくてワクワクして、舞台に立つのがこんなに楽しいのかと思いました。それから40年か41年、舞台は自由で一番エネルギーに満ちている時間。人生の大きな大きなエネルギーをもらってきた」と、笑顔で語った。本人は「演劇」と表現した時もあったが、その演劇に取り組んでいく覚悟も明かした。
演劇賞は橋本功、若村麻由美、古川雄大、生田絵梨花が受賞し、特別賞は松竹新喜劇の高田次郎が選ばれた。
(平成31年4月27日)
〜平成最後の演劇賞が次のように発表された〜
〜平田オリザが受賞〜
第22回「鶴屋南北戯曲賞」(主催・一般財団法人・光文文化財団)が平田オリザの「日本文学盛衰史」に決定した。
日本語で書かれた新作戯曲が対象の賞。今回は高橋源一郎の原作を下に創作された作品。これまで永井愛、野田秀樹、井上ひさしらが受賞している。
授賞式で平田は「次の演劇の作品に挑んでいきたいと思います」と挨拶していた。
〜大竹しのぶが演劇大賞〜
第44回「菊田一夫演劇賞」の各賞が決まった。
演劇大賞は「ピアフ」のエディット・ピアフの演技に対して大竹しのぶ。
演劇賞は「Le Pere」でアンドレを演じた橋本功。
「チルドレン」のローズ役の若村麻由美。「モーツァルト」のヴォルフガング・モーツァルト役などで古川雄大。
「モーツァルト」のコンスタンツェ役などの生田絵梨花。
特別賞は松竹新喜劇の舞台の功績に対して高田次郎だった。
〜蓬莱竜太が受賞〜
第6回「ハヤカワ悲劇喜劇賞」は蓬莱竜太・作、宮田慶子・演出「消えていくなら朝」に決まり、3月29日に贈賞式が開かれた。
この舞台は2018年7月12日〜同29日、新国立劇場で上演されたが、出演者は鈴木浩介、高野志穂、高橋長英らだった。早川書房が主催のこの賞は劇評家たちが劇評意欲を最も奮い立たせる演劇作品に与えられるという一風変わった演劇賞だ。
(平成31年4月4日)
〜岡本健一が最優秀男優賞〜
第26回読売演劇大賞が決まり贈賞式が2月28日に開かれた。大賞・最優秀演出家賞は『チルドレン』と『母と暮らせば』が対象作の栗山民也。最優秀作品賞は『百年の秘密』だつた。主な受賞者は次の通りだ。
最優秀男優賞・岡本健一
最優秀女優賞・蒼井優
最優秀スタッフ賞・上田大樹
杉村春子賞・松下洸平
芸術栄誉賞・木村光一
選考委員特別賞・『ザ・空気・誰も書いてはならぬ』
最優秀演出家賞を3度目授賞の栗山はスピーチで「本当にボクで良かったんでしょうか。ず〜と長い間取れなくてこのままフェードアウトするのかと思っていた。ドイツを徘徊していた時、劇場には真実があった。全ゆる真実と出会える場だ≠ニ話してくれたライナー・シュナイダーさんと出会ったのを思い出す」と語った。
49歳になった岡本。初の最優秀の受賞だ。19歳の時に初めて舞台出演をしたのが故蜷川幸雄演出『唐版・滝の白糸』だが「演劇人、舞台人に触れて、まあ普通じゃないと。実は頭がおかしい人ばかりで、自由に生きていて、自分もそんな舞台人になりたくて30年やってます」と言い、これまで70本やってきたそうだ。
蒼井は「え〜、とっても重たい賞です。『三人姉妹』の時、宮沢りえさんに言われた言葉をずっと思っています。褒められた人間ではないですけど、やつと宮沢さんの背中が見えてきたような気がします」と笑顔でスピーチした。
(平成31年3月3日)
〜桐生麻耶がトップスターに〜
OSK日本歌劇団の男役・桐生麻耶のトップスターお披露目となるレビュー「春のおどり」が3月28日〜31日に新橋演舞場、4月13日〜21日に大阪松竹座で上演するのに当たり、2月7日に制作発表会が開かれ、桐生、楊琳、舞美りらが出席した。
製作の松竹・安孫子正・副社長は桐生に初めて会った時、「これまでの立ち役・男役と一味違う、なんて野性的な個性か」と驚いたという。1997年入団の桐生は身長175aの長身。日本人離れした顔とスタイルが特徴だ。
第1部「春爛漫桐生祝祭」で作・振付の山村友五郎によれば「以前、この人にエルビス・プレスリーをやらしたら何とかなるぞと思ったほど」と表現。2部「STORM
of APPLAUSE」の作・演出・振付の平澤智は「彼女のイメージは嵐しかないでしょ」。その結果、祝祭の嵐というタイトルを思い付き、嵐と喝采になったと明らかにした。
この劇団と言えばダンスのOSK=B桐生は「お披露目という事にあまり振り回されずに、出演者41人全員がもう1回見てみたいという舞台にしたい。今は頭はかなりパニック状態。受験の時、自分で容姿端麗と言ってしまったけど、自分はこんな影のない男役がいてもいいかなと思っています。枠に捕らわれないのがいいのか悪いのか、とにかく洋舞も日舞も最高にしたい」と抱負を語り、また「自分と劇団が本来持っていた勢いのあるものを出したい」とも添えた。
(平成31年2月12日)
〜大谷廣太郎挙式〜
大谷友右衛門の長男・大谷廣太郎(26)と藤波果歩さん(25)の結婚披露宴が1月27日、東京会館で開かれた。
2人は幼なじみだが交際7年。昨年8月には入籍していたと紹介された。一般家庭に生まれ育った新婦は次女。野菜を仕入れる会社に勤めるOLで、今後も仕事を続けるそうだ。新婚旅行はハワイ。
披露宴では坂田藤十郎らが祝辞を述べ、乾杯の音頭は松本白鸚。一番最後に発した言葉が「結婚とは、一に忍耐二に忍耐、三四がなくて五が我慢です」。これには会場全体で大笑い。多くの俳優が列席したが、父親の友右衛門が終始、満面の笑みを浮かべて大喜びの姿が印象的だった。
ちなみに料理の献立は@アミューズブーシュ(マグロとオクラの小さなタルタルキャビア添え)A海の幸のカクテルとキャビア・ソーテルヌワインのジュレの輝きB東京会館伝説のダブルコンソメスープ・季節の野菜とロワイヤルC舌平目のポーピエット洋酒蒸・ボンファムD柚子のソルベE牛フィレ肉のフォア・グラ詰めパイ包み焼きプリンスアルベール風FベイクドアラスカGコーヒー。ごちそうさまでした。
(平成31年1月28日)
〜『ライオンキング』20周年〜
劇団四季のミュージカル『ライオンキング』が東京・大井町の四季劇場「夏」で上演20周年を達成した。
四季劇場「春」での初演が1998年12月20日。以来、東京を皮切りに大阪、福岡、名古屋、北海道の6地域でロングランを続けてきたが、同じこの日、上演回数が1万1732回、入場者数は1197万7300人を動員した。
国内のミュージカル上演回数では第1位。第2位の『キャッツ』が35年で9925回だから驚異的で化け物のようなヒットミュージカルといえる。
「サークル・オブ・ライフ(生命の連環)」をテーマとするライオンの子シンバの成長物語。終演後には特別カーテンコールが開かれた。映像で初演からの歴史が映され、「20YEARS・IN・JAPAN」2018・12・20と書かれた幕が下りると左右の客席通路から出演者が現れて舞台上へ。挨拶では父ライオンの王・ムファサの弟で仇役のスカーを演じた道口瑞之が「さらなるロングランを目指して参ります」と宣言すると盛んな拍手を浴びていた。
この公演は来年6月30日までの上演が発売されている。
(平成30年12月24日)
〜岡田将生のハムレット〜
早々と来年5月公演を公表したのが東京・渋谷のシアターコクーン『ハムレット』だ。
シェイクスピアの四代悲劇の中でも、一番人気の名作だが、主役ハムレットを演じるのが岡田将生。初のシェイクスピア劇登場だ。オフィーリアが黒木華、母ガートルードは松雪泰子、レアティーズが青柳翔、フォーティンブラスが村上虹郎、劇中劇で女王を演じるのが秋本奈緒美といった配役。演出が日本初登場のサイモン・ゴドウィン。5月9日〜6月2日の上演である。
(平成30年11月29日)
〜仁左衛門が文化功労者〜
歌舞伎俳優の片岡仁左衛門(74)が2018年度の文化功労者に選ばれた。
父の十三代目仁左衛門に続く親子2代の栄誉だ。2015年には人間国宝にも認定され、10月は10年ぶりの助六を演じたばかり。
十五代目襲名から20年。円熟期の松嶋屋の万全の体調維持を願いたい。
(平成30年11月1日)
〜『プリシラ』再演〜
来年3月の日生劇場でミュージカル『プリシラ』が同劇場で再演される。初演が2016年12月。主演のティックが山崎育三郎のほかバーナディトが陣内孝則、ダブルキャストのアダムがユナクと古屋敬多。
このメインキャスト4人が再び出演。ユナクと古屋敬多が初演では好演だった。演出は宮本亜門。ドタバタ珍道中の物語。今回は色気たっぷりの衣装で登場する場面が楽しみだという。
(平成30年10月1日)
〜研修生募集〜
日本芸術文化振興会が来年4月から開講する5分野の研修生を募集している。
対象は@歌舞伎俳優A歌舞伎音楽(竹本)B同・鳴物C同・長唄D文楽(太夫、三味線)。
募集期間は今年10月1日〜12月27日。研修期間は来年4月〜平成33年3月までの2年間。
日本の伝統芸を受け継ぎたい若者よ、挑戦せよ!
詳細の問い合わせは−。
電話03・3265・7105
国立劇場養成課まで。
(平成30年10月1日)
〜『レ・ミゼラブル』キャスト発表〜
来年4月19日、帝国劇場で開幕するミュージカル『レ・ミゼラブル』のキャストが発表された。
主役ジャン・バルジャンは福井晶一、吉原光夫、佐藤隆紀。主な9役がトリプルキャストであり、初参加の新キャストは10名。その中で期待するのはファンテーヌの濱田めぐみ、ジャベールの伊礼彼方だ。初演から30年を経た名作の進化はいかに?
(平成30年9月3日)
〜藤山直美の舞台復帰〜
乳ガン治療を経て10月のシアタークリエ『おもろい女』から舞台復帰する藤山直美。8月7日に開かれた製作発表での発言の中から注目した一部を紹介しよう。
@口火のコメント。
「私事の手術、治療で一番いけない事をしたお詫びを申し上げます」。昨年3月の中日劇場、4月の新歌舞伎座で予定していた再演が中止になったのを差している。舞台俳優、特に主役の休演で公演中止となる損害の影響の大きさを熟知しているからだ。
A上演までのステップ。
「役者としての勘、インスピレーション、スピードがどの位戻っているか。稽古で無理せずコツコツと努力して舞台に臨みたい」。俳優に欠かせない条件を語ったのだ。
B好きな物。
「私、三つ好きな物があるんです。歌舞伎と野球と矢沢永吉です」。さすが天下一の喜劇女優だ。取材陣を笑わせるだけでなく、話題を提供し、しかし、しっかりと俳優に求められる演技への条件を含んでいたのである。
『おもろい女』は森光子の代表作の一つ。「森光子さんが大事に育ててこられた作品。(ミスワカナの)心の底の部分を大事にしています」。ヒロポンを打つ場面が絶品だった森光子。直美の同じ場面を見逃してはいけない。
(平成30年8月26日)
〜三宅健の挑戦〜
“ケンタッキー”の一人、三宅健がいよいよ翻訳劇の名作に主演する。東京公演が10月のグローブ座、大阪の11月が森ノ宮ピロティホールで上演されるジョン・スタインベック原作『二十日鼠と人間』だ。
三宅にとって注目されるのは三点。
@三宅が演じるジョージは出稼ぎ労働者。友人レニーといつか自分たちの農場を持つのが夢だが、いつも問題を起こすその相棒によって悩みながら見捨てることが出来ない。これまで以上に演技力が問われる役だ。
A演出の鈴木裕美とは2008年の『第17捕虜収容所』以来10年ぶり3回目の仕事である事。三宅はその演出によって「また新たな自分に出会えることに期待を膨らませ、今からドキドキワクワクしています」と抱負を語っている。
B共演の藤木孝、山路和弘という新劇のベテラン、また、章平、花乃まりあらとどう火花を散らすか。
俳優としてワンランクもツーランクもステップアップ出来るか。絶好の挑戦の機会を得た芸術の秋の注目株に期待しよう。
(平成30年6月26日)
〜歌六が紫綬褒章〜
4月28日に発表された春の褒章で歌舞伎俳優の中村歌六(67)=本名・小川進一=が芸術文化で紫綬褒章を受章した。
歌六は今や吉右衛門を支える貴重な脇役のみならず、歌舞伎界の中で欠かせない時代物俳優の大看板と言える。
この十年で飛躍的に巧さを身に付けて充実した舞台を見せてきた。これからもいぶし銀の芸を期待したい。
(平成30年4月30日)
〜玉三郎が大賞 〜
坂東玉三郎が大賞、尾上右近が新人賞を受賞した。3月28日に帝国ホテルで行われた第39回「松尾芸能賞」の贈呈式。
玉三郎は昭和56年の第2回に優秀賞を受けており、「私は若い時から大阪へ度々出演し、松尾(國三・初代理事長)様にお世話になりました。大賞の受賞は大変光栄。これからも何はともあれ芸道、一生修業です。楽しんでいただける舞台を作って参ります」と挨拶。
右近は黒紋付きに袴姿で、大谷信義・松竹会長から表彰され、頭を下げ続けて緊張気味。「これからも生命の輝きをキャピキャピ輝かせる役者になりたい」と挨拶した。
この他では舞踊の猿若清方、能楽の藤田六郎兵衛、歌謡の森昌子が優秀賞、演劇の高田次郎が特別賞を受けた。
(平成30年4月2日)
〜宮沢りえの心に残る言葉とは 〜
第25回を迎えた読売演劇大賞の贈賞式が2月28日に開かれた。主な受賞者と作品は次の通りだ。
◇大賞・最優秀女優賞・宮沢りえ
◇最優秀作品賞・「子午線の祀り」
◇最優秀男優賞・橋爪功
◇最優秀演出家賞・永井愛
◇最優秀スタッフ賞・土岐研一
◇杉村春子賞・シライケイタ
◇芸術栄誉賞・仲代達矢
◇選考委員特別賞・「ビリー・エリオット・〜リトルダンサー〜」
優秀賞では男優賞に市村正親、中村雀右衛門ら、女優賞に新橋耐子、若村麻由美らが選ばれた。
「足跡姫」などの三役が対象だった宮沢は快挙だ。過去に大賞と最優秀賞を受けた女優は杉村春子、黒柳徹子、森光子、大竹しのぶのみ。舞台の名女優と肩を並べた訳だ。
背中を大胆にざっくりと露出した白いワンピースドレスを纏って喜びのスピーチをした。オーラを発散し、輝くばかりの美しい笑顔と立ち姿の44歳。
「あ〜、緊張しています」と口を開いた。「ダメ出しばかりでちっとも褒めてくれない演出家のおかげです」。故蜷川幸雄、野田秀樹らを指しているのだろう。大女優に並んだことについては「足が震えました」。そして「蜷川さんの稽古場である言葉を受けました。自分をもっと疑えよ!なぜもっと疑わないんだ−。今もこれが心に響いています。これをテーマに表現者としていきます」と締めくくった。
85歳の仲代のスピーチも会場を湧かせた。「私、本当の年寄りの俳優です。70年近い俳優人生です。今まで現役でこられたのも演出、監督、共演者たちとの出会いのおかげだと思っています。もうそろそろかなと思っていますが、もう少し頑張って続けてみたい」。まだまだ演劇の最前線に立つ意気込みであった。
(平成30年3月4日)
〜『名優の食卓』発行しました 〜
自著『名優の食卓』がようやく演劇出版社から9月26日に発刊となりました。
月刊誌「演劇界」に平成26年から掲載してきたノンフィクションです。第1回の九代目市川團十郎から最終回の十二代目團十郎まで歌舞伎の名優三十五名の物故俳優が載っています。
卵料理に目がなかった十七代目中村勘三郎、弟子たちに囲まれてワイワイ騒ぎながら夕食を楽しんだ六代目尾上菊五郎、二代目尾上松緑、マイ包丁で鮪を見事に捌いて家族に振る舞った十二代目團十郎…
名優の好物、食生活、そしてその日常の中から生まれた至芸の背景などを読み取っていただければ幸いです。ちょっぴり自慢すればこれまで知られていなかった秘話や新事実がさりげなく潜んでおります。エヘン、エヘン…。
お求めいただくには03・3261・2815(演劇出版社)まで申し込みください。同社のホームページに詳細が載っています。よろしくお願い致します。
(平成29年10月3日)
〜色男、吉田幸助の素顔とは?〜
「ふだん、よくしゃべる方ではないが、大阪人なので駄洒落とか、オチを付けなきゃいけないのかなあと考えます」。と、これは文楽の人形遣い、吉田幸助だ。
この幸助が五代目吉田玉助を襲名する披露会見が9月19日に行われ、その際、当方が「あなたの素顔を教えて?」と質問した返答の一つである。
祖父・三代目吉田玉助の名跡を継ぐに当たり、父の故二代目玉幸に四代目を追贈するが、文楽で追贈は初めてだという。
食べ歩きでは肉が好きで、車の運転も好き、そしてクラシック音楽が趣味の幸助。初舞台から36年目、父が亡くなって10年の現在51歳。将来は時代物の勇壮な立役を中心に婆などの女形、立女形もやりたいと、欲深い、いや意欲的だ。
来年4月に大阪・国立文楽劇場、5月に東京の国立劇場小劇場で襲名公演が行われる。演目は『本朝廿四孝・勘助住家の段』の山本勘助。人形遣いでは二枚目の玉男、そしてこの幸助。色男が二人並んだ。「玉・玉」コンビが早く見たい。
(平成29年9月23日)
〜日本初演『メリー・ポピンズ』〜
ミュージカル『メリー・ポピンズ』が来年3月から東京・シアターオーブで、同5月から大阪・梅田芸術劇場での上演が発表された。
既に世界10か国以上で10年以上も上演されている大作。注目はオーディションで選ばれた日本オリジナルキャストだ。
主役級は全てダブルキャスト。家庭教師メリー・ポピンズは濱田めぐみ・平原綾香。バートが大貫勇輔・柿澤勇人で、この他、島田歌穂・鈴木ほのか、コング桑田・パパイヤ鈴木らが出演する。
空を飛べる傘、迫力あるダンスや舞台セットにも興味が集まるだろうが、当方の楽しみは濱田と平原の歌唱合戦だ。
(平成29年8月28日)
〜市村正親、鳳蘭らで記念公演〜
日生劇場で12月に上演されるミュージカル『屋根の上のヴァイオリン弾き』(12月5日〜同29日)のキャストが発表された。1967年が日本初演であり、50周年記念公演と銘打った。
主演のテヴィエが市村正親、妻ゴールデが鳳蘭、長女ツァイテルが実咲凛音、次女ホーデルが神田沙也加、三女チャヴァが唯月ふうか。そして仕立屋モーテルが入野自由、学生パーチックが広瀬友祐、ロシア人フョートカが神田恭平、肉屋ラザールは今井清隆だ。
その他、個人的に期待するのが石鍋多加史、青山達三、廣田高志、荒井洸子という共演陣。名曲「サンライズ・サンセット」、群舞、父と娘の別れの場面が目に浮かぶ。来年1月からは大阪、静岡、名古屋、福岡でも上演される。。
(平成29年5月25日)
〜伊勢佳世がフリーに〜
前川知大が主宰する劇団、イキウメの看板女優だった伊勢佳世が退団していた。。
昨年5月に上演された『太陽』が最後の出演。フリーとして活動していくという。
イキウメは春公演として『天の敵』を東京芸術劇場シアターイースト(5月16日〜6月4日)で上演中、大阪ABCホール(6月9日〜同11日)でも上演する。
(平成29年5月24日)
〜麻実れいが菊田一夫演劇大賞〜
第42回「菊田一夫演劇賞」の授賞式が4月28日、如水会館で開かれた。大衆演劇の舞台ですぐれた業績を示した芸術家を表彰するこの賞の第1回は1975年だった。
演劇大賞にはこれまで森繁久弥、長谷川一夫、森光子ら名優の名が並ぶ。今回の演劇大賞は麻実れいが選ばれ、演劇賞は中川晃教、小池徹平、新橋耐子、演出の藤田俊太郎、そして特別賞は照明の勝柴次朗だった。
『8月の家族たち』と『炎・アンサンディ』の演技に対して受けた麻実。「花咲く4月に宝塚に入りましたが、47年目の春を迎えました。この先どうなるか分かりませんが、勇気を持って行きたいと思います」と喜びを語った。
中川は「これから何をするか深く考える機会になりました」。小池は「歩んだ道が間違っていなかった。力になると思って感謝しています」。新橋は「文学座の良さって何だろうーと考えながら体に気をつけて次のステップに進みたい」。藤田は亡き恩師の蜷川幸雄に向かって「蜷川先生、とても素晴らしい賞を頂きました。先生はくれぐれも調子に乗るなよーと言うと思います。蜷川さんの精神を受け継ぎたい」。従来より若返った受賞者は皆、次のステップに向かっているのが印象的な授賞式だった。
(平成29年5月9日)
〜『キネマと恋人』の再演を〜
早川書房などが主催の「ハヤカワ・悲劇喜劇賞」の第4回がケラリーノ・サンドロヴィッチ台本・演出『キネマと恋人』に決まり、贈賞式が開かれた。
この賞がユニークなのはその年のベスト1を選ぶのではなく、評論家らの劇評意欲を最も奮い立たせた作品を選出する点だ。
絶賛するか酷評するか、いずれにしても刺激させてくれた作品という訳だ。
妻夫木聡、緒川たまき、ともさかりえらが出演した舞台では俳優がインフルエンザにかかって休演する事態もあった。ケラがこの賞に選ばれた喜びを挨拶で語ったが、式では再演の決定が発表されたのも大喜び。時期は未定ということだが、早い時期での上演が待たれる。
(平成29年4月11日)
〜鶴屋南北賞に蓬莱竜太〜
光文文化財団の第20回・光文三賞が決まり、「鶴屋南北戯曲賞」は蓬莱竜太の「母と惑星について、および自転する女たちの記録」が選ばれ、3月23日に贈呈式が行われた。
急逝した母親と三姉妹の物語である「母と」は母の遺灰をまくために旅に出た娘たちがイスタンブールを目指し、奔放だった母を回想していく。式で蓬莱は「男4人だけで劇団を作ったのに女だけの『まほろば』で岸田國士戯曲賞を受け、今回も女性だけの物語での受賞。4人のメンバーはこの会場に誰も出席してくれません。まず、劇団との関係を修正していきたい。もっともっと男を書こうと思います」と笑わせた。
授賞の言葉では「さて四十を超えた自分はこれから何を書いてどこに向かっていくのかと考えていた矢先の受賞となりました。再スタートの区切りとなるような、そんな絶妙のタイミングでした」と書いていた。
なお、日本ミステリー文学大賞は佐々木譲、同新人賞は戸南浩平の各氏だった。
(平成29年3月27日)
〜顔に似合わず面白い英太夫〜
呂太夫の名跡が17年ぶりに復活する。
文楽大夫の三代豊竹英太夫が六代豊竹呂太夫を襲名し、その披露が来年4月に大阪・国立文楽劇場、5月に東京・国立劇場小劇場で開催されるが、会見の英太夫が抜群に面白く、楽しい個性の持ち主だと初めて知った。
当方が質問したのは3点。最初は50年間名乗った英太夫という名前への思い。二つ目はその名前で語る最後の舞台。最後は文楽の中で特に太夫が求められている状況だ。
「英大夫は物凄く大好き。いい名やなあ、と。愛着があって呂太夫になるといってもピンと来ない。今は、よっしゃ、心機一転、やるぞという気です」。英大夫という名は、名人だった祖父三代豊竹若太夫(三代呂太夫)の幼名であり、祖父の本名(林英雄)から一字取ったもの。そして「英」は「えい」と読まずに「はなぶさ」と呼ぶのが気に入っているという。会見後、個室を訪ねたところ、「よく聞いてくれました。話したかったんです」と満面笑み。失礼ながら“じゃがいも”のようなゴツゴツとした丸いお顔が崩れっばしだった。
二つ目の答えは側にいたスタッフを向いてから「まだ言えませんのやろ? 12月は『忠臣蔵』の勘平を語ります」とケムに巻いた。これも個室で聞くと「へへへ。決まってますが、言えませんのや」。実は当方と同じ昭和22年生まれ。この世代の特徴である愛嬌(と、勝手に思い込んでいる私)が満ちていた。
最後の質問だが、「世代交代はしているが切場語りが少ない。勉強に時間をかけるのが大事」。床本に取り組む勉強、修業こそ大切だと言うのだ。
小説家になりたかった。東京大学へ入学を目指して小石川高校に入ったそうだ。新しいものを語る時は3か月前から一日6時間勉強するが「あの時、今の勉強をやっていたら、東大の理三にストレートで入れた」と笑わせた。
入門50年。襲名時には70歳になる。50歳代から60歳代にかけて「70を区切りにやるぞーという思いがあった」と英大夫。襲名披露狂言は大曲『寺子屋の段』。頑張れご同輩!。
(平成28年11月23日)
〜さあ、行け!走れ、コウタロー〜
蜷川幸雄さんの後任として俳優・吉田鋼太郎(57)が、さいたま芸術劇場の二代目芸術監督に就任した15日、記者発表会見が帝国ホテルで開かれた。この日は蜷川さんが生存していれば81歳の誕生日。
「彩の国シェイクスピア・シリーズ」として37作のシェイクスピア完全上演を目指した蜷川さんは32作品の演出を実現。吉田は残る5作品のシリーズを演出する芸術監督に就任したのだ。
眼鏡、口髭の吉田は白いYシャツにダークスーツ、グレーのネクタイ、チョッキという地味な正装で現れた。右手にマイクを持って「吉田鋼太郎です。よろしくお願いします」と挨拶して、着席した。やや緊張気味。
「シェイクスピア作品で受け継ぐ一番は言葉。作品は詩ですから、まず朗唱。蜷川さんが最晩年におっしゃっていたことです。その言葉を血と肉を入れ、対話にしなけりゃいけないのに脱落する俳優がいるんだともおっしゃっていた」
亡くなるひと月前の4月、病床で蜷川さんは「鋼太郎が役者のめんどうを含めて見てくれると安心なのだがなあ」と話したことが劇場側から明らかにされた。吉田は「蜷川さんは俺がいなくなったら終わり、という人だと思っていたので意外だった」。10年前から頼まれて若手の演技指導を続けてきたという。
最後に「蜷川さんの血とボクの血と両方融合していければいいなと思います」。演出する第1作『アテネのタイモン』を始め『ジョン王』、『ヘンリー五世』、『ヘンリー八世』、『終わりよければすべてよし』の5本は「蜷川さんがやりたくない物を残した。それに燃える」と恩師同様、闘う演出家の顔になった。
(平成28年10月23日)
〜「忠臣蔵」連続3か月〜
開場50周年を迎えた国立劇場が、その記念事業となる公演ラインアップを発表した。対象となるのは9月の文楽公演から来年3月までの自主公演。2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けた文化プログラムでもある。
注目の歌舞伎公演だが、『仮名手本忠臣蔵』の通し狂言として10月から12月までの連続3か月、3部に分けての上演となる。
10月の第1部が大序から四段目までで大星由良之助が松本幸四郎、塩治判官が中村梅玉。二段目・桃井館、三段目・裏門など珍しい場面も上演される。
11月の第2部は道行旅路の花聟から七段目・祇園一力茶屋の場までで早野勘平が尾上菊五郎、大星由良之助が中村吉右衛門。
そして第3部の12月は八段目・道行旅路の嫁入りから十一段目・花水橋引揚げの場までで加古川本蔵が松本幸四郎、大星由良之助が中村梅玉。
全段上演は昭和61年(1986)の20周年記念公演以来。各部とも休憩を含んで約5時間の上演となる。
来年1月の初春歌舞伎公演は通し狂言『しらぬい譚(仮題)』を尾上菊五郎らの配役で上演するが、3月は未定。また国立劇場は平成33〜36年(2021〜2024)に改修工事が行われることになっている。
(平成28年5月24日)
〜小学生よ!歌舞伎を楽しもう〜
文化庁が主催する「小学生のための歌舞伎体験教室」(製作・一般社団法人伝統歌舞伎保存会)が今夏も開催される。
小学生に歌舞伎の楽しさを知ってもらうための事業で、A・鑑賞教室+舞台機構の体験 B・ワークショップ C・体験教室の3コースから選択できる。
指導監修が中村梅玉。主任講師は市川團蔵、中村雀右衛門、中村時蔵、中村又五郎。このほか歌舞伎俳優、歌舞伎音楽演奏家らが指導に当たります。
Aは7月9日に国立劇場大劇場で、Bは8月2日に江戸東京博物館ホールで、Cは7月3日から8月9日までの期間、国立劇場などで行われます。
そのための参加者を募集中です(募集締切り5月16日午前10時まで)。詳細と問い合わせは伝統歌舞伎保存会事務局(電話03・5212・1243)へ。
(平成28年5月1日)
〜花總まりが演劇大賞〜
2015年度の第41回「菊田一夫演劇賞」の授賞式が4月18日に行われた。
演劇大賞を受けたのは「エリザベート」でエリザベートを演じた花總まり。2003年度の第29回で演劇賞を受賞しているが、今回の大賞の受賞は格別な思いがあったようだ。
「宝塚歌劇を退団してからしばらく舞台を辞めた私がこんな大変な賞をいただきました。演じる事の、舞台の素晴らしさを舞台を通して希望や夢や、生きる力が舞台にはある。『あなたは絶対やらなきゃダメよ』と言ってくれた事務所には感謝しています。20年前、初めて演じたエリザベートはかけがいのない役。今、もう一度、この役で再チャレンジできました。これからは迷う事なくこの道を歩んで参ります」と、ようやく実感できた気持ちを話していた。
演劇賞には梅沢昌代、駒田一、ソニン、演出の小川絵梨子、そして特別賞には訳詞の竜真知子が選ばれた。
賞には縁がないと思っていたというソニンは演劇で賞を受けるのは初めて。「世の中、マイノリティのある人に私を通じてこんな事があるんだ≠ニ思ってもらえる」と話した時、涙を流していたのが印象的だった。
(平成28年4月19日)
〜読売演劇大賞の仁左衛門〜
第23回読売演劇大賞の贈賞式の模様を紹介しましょう。
まず、大賞と最優秀男優賞が片岡仁左衛門。最優秀作品賞が「グッドバイ」、最優秀女優賞が小池栄子、最優秀演出家賞が鵜山仁、最優秀スタッフ賞が乗峯雅實。
さらに、杉村春子賞が高畑充希、芸術栄誉賞が奈良岡朋子、選考委員特別賞は宮本宣子だった。
歌舞伎俳優が大賞を受けたのは初めての仁左衛門は父・十三世仁左衛門の23回忌に当たる年に第23回で受賞した事を喜び、菅丞相の役を改めて映像で見た父親にまだまだ及ばない事を語った。
奈良岡のスピーチが印象に残る。劇団民芸に入った当時、同期生だった故大滝秀治と二人が決めたのは、辞めずに俳優を続ける誓いをしたといい、「才能もない私がもし才能が一つあるとすればここまで続けてきたこと、続ければ何かいい事があります」と会場全員に訴えた。
小池栄子は優秀演出家賞の一人に入ったラサール石井の方に目を向け、「グラビアなどに出ていた私を舞台の世界に入れてくれて、最初に出してくれたのがラサール石井さんでした。感謝しています」と微笑んだ。
蜷川幸雄・演出の「青い種子は太陽のなかにある」の演技も受賞対象になった高畑充希。「蜷川さんは怖いし、でもポイント、ポイントで愛のある言葉をかけてくれました。賞を受けるのは初めてなので、飛び上がって喜びました』と初々しいスピーチだった。
(平成28年4月1日)
〜松尾芸能賞の平幹二朗〜NEW!
平成28年度の第37回松尾芸能賞の贈呈式が3月29日に行われた。まず、各賞は−。
◇大賞(演劇) 平幹二朗
◇優秀賞(邦楽) 宮田まゆみ
(‖) 六代目杵屋勝四郎
(演劇) 一路真輝
◇新人賞(演劇) 二代目尾上松也
◇特別賞(舞台美術) 鳥居派九代目鳥居清光
◇功労賞(能楽) 冨山禮子
◇研修助成賞(大衆芸能) お笑い浅草21世紀
受賞挨拶で平幹二朗(82)は「人生の持ち時間が少ないが、背中をポンと押し出していただいて、台詞が覚えられる限り続けたい」と笑顔で話した。先輩俳優には軽やかさと艶やかさが必要だと教わったという。
一路は「(宝塚を)退団して20年、芸能生活35周年の節目でいただき、又、頑張ろうという気持ちになりました」と語り、連れてきた一人娘さんと喜んでいた。
松也は20歳の時に父を亡くし、24歳の時に自主公演「挑む」を始めた思い出とともに「本当に大変光栄。賞に恥じないよう精進を続けます」と、さらなる飛躍を目指していた。
主催する松尾芸能振興財団は、昭和63年に開塾した松尾塾子供歌舞伎の公演を昨年8月に閉塾したが、今後は何か新しいものを考えているという。期待しよう。
(平成28年4月1日)
〜石原慎太郎氏の辞世の句〜
作家・石原慎太郎氏(83)の辞世の句が一中節になった。「灯台よ 汝(な)が告げる言葉は何ぞ 我が情熱は誤りていしや」。これがその句。
一中節の十二世家元・都一中が作曲した「私の海」という新作を石原氏が作詞。その中に先の句に二度含まれている。
この句が冒頭から始まり、「海に生き 海に死なむとする我を」と続き、「おお海よ 海 虚無と無限に通う 我が心のふるさとよ」で終わる約20分間の新作だ。
「私にとっては全く未知の世界の一中節に未知の領域を開きたいという家元のお申し出を受けました。
海は私の人生にとって不可欠の光背です。
私にとって海ほど美しく危うく未知なるものを追いかけて帆を開く試みをしなくては芸術として成り立ちはしません。。
家元の試みに私も芸術家の一人として共感し、つたない御手伝いをさせて頂きましたがこの新しい航海が無事彼岸にたどりつくことを願っています。」
これが発表会に向けて書かれた挨拶文だが発表会では「演奏を聴いていて思い出すのは、よく喧嘩した三島由紀夫さん。(詞章が)古典の中の古典である一中節になり、彼が生きていたら、私を羨んでくれたのでは−という自負がある」と挨拶。
江戸期の元禄時代に始まったという一中節。これまで近松門左衛門、芥川龍之介、谷崎潤一郎らの文学者が作詞をしている。「拙文が一中節になったのは誇らしい」と石原氏は演奏に聴き入っていた。
(平成28年2月1日)
〜亀井広忠が家元に〜
亀井広忠が能楽囃子方の葛野流十五世家元を一月吉日に継承した。
広忠は亀井忠雄の長男。挨拶状には「未だ若輩の身ではございますが累代の先人方の御遺徳を穢さぬ様、尚一層精進を重ねて参る所存」と書かれていた。1974年生まれの41歳。太鼓方として実力には定評がある。
(平成28年2月1日)
〜明治座で“富士山”を楽しもう〜
年明け早々の来年1月2日(午後1時半・開演)、東京は浜町の明治座で“富士山”を見ることが出来ます。
「FUJIYAMA」と題したエンターテインメント公演がそれです。世界遺産である日本美の象徴、富士山をテーマに多彩な分野の伝統芸能が集合。お正月気分を富士山と共に楽しめます。
1幕の第1部が剣舞「喜昇富士」。富士をイメージした真剣による舞を披露。2部「吉兆手打式」は 地元の葭町芸者らが繰り広げる珍しい踊りです。3部は柳家花緑の落語「初天神」。古典落語の名作を花緑師匠が面白く演出します。
2幕の第1部が日本舞踊「八合目」。藤間勘十郎、若柳吉蔵、市川ぼたん、尾上菊之丞らによる新作。富士山がテーマの奇想天外な狂言舞踊の意欲作です。
そして2部が日本舞踊と殺陣による新作エンターテインメント「日本武尊剣勇功(やまとたけるつるぎのいさおし)」。富士山を背景に主人公ヤマトタケルの伝説を日本舞踊で描きます。
一、富士、二、鷹、三、なすび。劇場ロビーでは伝統的なお正月遊びも体験でき、浜町でお正月の初夢を見てはどうでしょう。
ちなみに私が監修を担当しています。
(平成27年11月26日)
〜「ライオンキング」1万回〜
劇団四季のミュージカル「ライオンキング」が7月15日、通算上演1万回を達成した。
1998年の初演以来16年目。四季劇場・春という同一の劇場での連続ロングランという日本では画期的で珍しい記録だ。
この日の時点で国内ミュージカルの上演回数ランキングのベスト5は@ライオンキングAキャッツBオペラ座の怪人C美女と野獣Dレ・ミゼラブル。
子供に一度は見せたいミュージカルは「ライオンキング」
オトナが一度は見るべきミュージカルは「ラ・マンチャの男」と「オペラ座の怪人」
一度はカラオケで歌いたい曲は「キャッツ」の「メモリー」。
(平成27年7月29日)
〜宝塚歌劇団が菊田一夫演劇大賞〜
第40回「菊田一夫演劇賞」が発表された。
◆演劇大賞
宝塚歌劇団(宝塚歌劇100周年の一連の舞台の成果に対して)
◆演劇賞
森公美子(「シスター・アクト〜天使にラブレターを〜」のデロリス・ヴァン・カルティエの役の演技に対して)
佐々木蔵之介(「ロンドン版ショーシャンクの空に」のアンディ・デュフレーンの演技に対して)
M田めぐみ(「カルメン」のカルメン、「メンフィス」のフェリシア・ファレルの役の演技に対して)
ケラリーノ・サンドロヴィッチ(「パン屋文六の思案〜続・岸田國士一幕劇コレクション〜」、「三人姉妹」の演出の成果に対して)
◆演劇賞特別賞
渡辺美佐子(今年度の「黄昏にロマンス−ロディオンとリダの場合−」のリダの役を含む、永年の舞台の功績に対して)
【注】特別賞の渡辺美佐子は「私は俳優座養成所を出て、小さな劇場でコツコツとやってきたのに栄えある賞を頂き感謝しております。これからも自分らしい舞台をコツコツと作って参りたいと思っています」と挨拶。森は「屋根の上のヴァイオリン弾き」に出た時、森繁久弥から楽屋に呼ばれ、「お前の日が来る、と言われて命名された名前が雷電ため子=Bえ、え〜!でした」と笑わせた。
(平成27年4月24日)
〜歌昇君、おめでとう〜
歌舞伎俳優の花形として急成長の中村歌昇が3月30日、萩岡信乃さんとホテルオークラ東京で結婚式と披露宴を行った。
まず、披露宴の会食メニューから紹介しましょう。
@ウェディングパーティーの幕開けにフォア・グラの温かいムース・ポルトワインの香り
A海の幸のマリネをトマトのジュレにのせてカラフルなサラダとともに
B冷静コンソメとヴィシソワーズスープ“パリソワール”
C真鯛のソテーにオマール海老とアスパラガスを飾って蛤の旨みをソースに
D純白のシャンパーニュブラニテ せとか(佐賀県産の種類)オレンジシャーベット
E特撰黒毛和牛フィレ肉 蓮の葉の塩釜焼き 春野菜を添えて酸味の香るソースとともに
Fお楽しみのデザート 苺とフロマージュブランのムースほんのり桜の香り ヴァニラアイスクリームとともに
Gコーヒーと一口菓子
葛西聖司さんの司会による宴会の最後で二人はマイクを向けられた。「辛抱強い所が気に入りました」と新婦の信乃さん。「思いやり、気配り。私にない所が好き」と新郎の歌昇。3年待ったという歌昇はプロポーズの言葉について「ボクは普通に、結婚して下さいと言いました」。信乃さんはこれに対して「頑張りますと答えました」。会場はここで大爆笑。おおらか二人だった。
新郎の父、又五郎がお礼の挨拶。何度となく「ありがとうございました」と頭を下げていたのが印象的だった。
(平成27年4月2日)
〜七之助が新人賞受賞〜
第36回「松尾芸能賞」が決まり、3月27日に贈呈式が行われた。
受賞者は大賞が歌謡の五木ひろし。
優秀賞は舞踊が出雲蓉、邦楽が奥村旭翠、テレビが室井滋、演劇が井上芳雄。
新人賞は演劇の中村七之助。
特別賞が映画の戸田奈津子。
功労賞が演芸の根岸京子。
研修助成賞が民謡の日本民謡プロ協会だった。
近年で歌舞伎俳優の新人賞は市川段治郎(現月乃助)、片岡愛之助、市川春猿、中村勘九郎が受賞しており、七之助は兄弟受賞となった。
(平成27年4月2日)
〜延郎らに日本俳優協会賞〜
第20回日本俳優賞が決定し、、2月18日、歌舞伎座で上演中の昼の部「彦山権現誓助剱・毛谷村」の終演後の幕間に舞台上で表彰式が行われた。
受賞者は日本俳優協会賞が寶川延郎、同奨励賞の中村橋吾、同功労賞の坂東羽之助、そして尾上菊十郎に20回目の区切りという記念を込めて同特別賞が贈られた。
舞台上には日本俳優協会の専務理事で俳優賞の担当の中村吉右衛門と安孫子正松竹副社長が列席し、浅原事務局長が司会。
他劇場に出演中の羽之助を除き、3人の受賞者が列席。一人一人、吉右衛門から賞金が渡された。会場の笑いを誘ったのが菊十郎。この人は第1回に協会賞を受けており、受賞の説明を聞いて立った後、再度椅子に座ってしまい、促されて賞金を受け取った姿がいかにも剽軽な俳優らしい風情だった。
吉右衛門、安孫子副社長が、今後とも歌舞伎を愛し、見守っていただけるようにという挨拶があり、観客席から盛んな拍手。そして一本締めの手拍子で盛り上がっていた。
(平成27年3月2日)
〜この十年の主役の動向と傾向〜
月刊誌「悲劇喜劇」(早川書房)12月号で「主役の動向と傾向」が掲載されています。演劇の世界に於ける特集「この十年」の中に執筆したものです。現代劇、ミュージカル、商業演劇、歌舞伎の四分野に整理してみました。過去十年間で演劇を支えてきた俳優が分かると思います。ご一読下さい。
(平成26年11月20日)
〜劇団四季の「アラジン」〜
劇団四季の新作ミュージカルが9月29日に発表された。東京・汐留の四季劇場「海」で上演される注目のその作品は「アラジン」。初日が来年5月24日(日)からの超ロングラン。出演陣の主な9役を中心にオーディションで選ぶ。四季のディズニーミュージカル第5弾だ。
舞台は砂漠に囲まれた都アグラバー。その下町で暮らす貧しい青年アラジンが主人公だ。母親を亡くしたばかりの彼は市場で一人の女性と出会う。彼女はアグラバー王国の王女ジャスミンだった。
一方で邪悪な大臣ジャファーは3つの願いが叶うという魔法のランプを手に入れようとする。アラジンは魔法のランプの精ジーニーによって王子に変身。ジャファーらと闘う。
主なポイントは3つ。
@音楽は主題歌「ホール・ニュー・ワールド」など7曲。そして新たな楽曲が追加される。
Aオーディションで選ぶ出演者は全キャラクターを座内を含んで選出される。特にアラジン、ジャスミンの主役2人は20歳代のフレッシュで強いボイスを持った人になる。
B制作費は「ライオンキング」級の高いコスト。年単位の超ロングランを計画している。
待ちに待った新作によって四季の新たな活性化となるか。20周年という四季とディズニーの提携は今後の試金石でもある。
(平成26年10月21日)
〜森山未来のアトム〜
1年間の文化交流を終えた俳優・森山未来の帰国後第1弾の舞台が発表された。
来年1月9日〜2月1日、東京・渋谷シアターコクーンで上演される「プルートゥ(PLUTO)で、森山が演じるのは鉄腕アトム。
限りなく人間に近い存在であるロボットのアトムは高性能刑事のロボットのゲジヒトとともに次々とロボットが破壊される事件の謎を追っていく物語。
ベルギー、イスラエルで文化交流使として活動してきた森山は「1年を通じて変化してきたであろう自分自身を見つめる良い機会になればと考えています」。演出はオリヴィエ賞を2回受けているシディ・ラルビ・シェルカウイ。永作博美、柄本明、吉見一豊、松重豊、寺脇博文らが共演する。
(平成26年10月21日)
〜菊之助の結婚披露宴メニュー〜
5月27日にホテルオークラ東京で開かれた尾上菊之助・瓔子夫妻の結婚披露宴。笑顔満面の二人を祝いながらいただいたお料理の旨かったこと。で、メニューを紹介しよう。
@祝宴の初めに一口前菜・パテ・ド・カンパーニュのテリーヌ・バンコットソース添え
A鹿児島黒豚とリードボーのフィロー包み焼きに旬彩を添えて
B伝統のコンソメスープに旬のジュンサイを浮かせて
C新鮮平目の白ワイン蒸しに香味野菜を添えて・ソース・ポーム・ダムール
D特撰黒毛和牛のフォワグラ詰めパイ包み焼きヴェリントン<gリュフの香るソースと共に
Eお楽しみデザート・心からの祝福と共に・薫り高き野苺とフロマージュブランのムースに赤い果実のアイスクリーム
Fコーヒーと一口菓子
お尻丸出しで女装した左團次、フラダンスを3日間稽古したという亀蔵らのパフォーマンス。菊五郎劇団恒例の型破り興行とともに、おいしゅうございました。
(平成26年6月23日)
〜尾上松緑が松尾芸能賞優秀賞〜
第35回「松尾芸能賞」が発表された。
◆大賞
(演劇)波乃久里子
◆優秀賞
(演劇)尾上松緑
(邦楽)中川善雄
(演劇)渋谷天外
(舞踊歌謡)相原ひろ子
◆新人賞
(歌謡)福田こうへい
◆特別賞
(音楽)ペギー葉山
(舞台音楽)竹本朝輝
◆功労賞
(演劇)中村小山三
【注】功労賞の中村小山三は大正9年(1920)生まれの93歳。歌舞伎界最長老の女形脇役。優秀賞の尾上松緑は花形世代の中心俳優。3月28日の贈呈式で「私は賞には縁も興味もなかったのに頂けた。ただ毎日、舞台を見て頂くのが仕事。明日に向かっていくだけです]と挨拶をしていた。
(平成26年4月4日)
〜宮沢りえが菊田一夫演劇賞〜
第39回「菊田一夫演劇賞」が発表された。
◆演劇大賞
「レ・ミゼラブル」スタッフ・出演者一同
◆演劇賞
宮沢りえ(「MIWA」のMIWAの役の演技に対して)
中村勘九郎(「さらば八月の大地」の張凌風、「真田十勇士」の猿飛佐助の役の演技に対して)
田代万里生(「トゥモロー・モーニング」のジョン、「スクルージ」のハリーと若き日のスクルージの役の演技に対して)
栗山民也(「木の上の軍隊」「マイ・ロマンティック・ヒストリー」「それからのブンとフン」の演出の成果に対して)
◆演劇賞特別賞
草笛光子(永年の舞台の功績に対して)
【注】特別賞の草笛光子は昭和8年(1933)生まれの80歳。同55年には演劇賞を受けていた。演劇賞の宮沢りえのMIWAの役は舞台女優としてワンランク駆け上がった出来だった。大女優への道を突き進んでいる。
(平成26年4月4日)
〜藤間掬穂が師籍50周年〜
紫派藤間流の舞踊家、藤間掬穂が「師籍五十周年藤間掬穂舞踊会」を3月29日に東京・国立劇場大劇場で開催する。
25年前から始めた同劇場での舞踊会は7回目だが、指導者として腕を奮ってきた掬穂にとって50周年の記念の今回、菊穂は「積恋雪関扉」を歌舞伎俳優の市川右近が関兵衛、自身は墨染で披露する。
また、流祖だった故藤間紫の孫である藤間爽子と掬穂の弟子・胡掬が「鶴亀」を踊り、第1部の「京鹿子娘道成寺」の前の幕間には2歳の孫、咲希が花道から他の子供たちと共に初お目見えとして出演させる。
(平成26年2月27日)
〜「MIWA」が「悲劇喜劇」賞〜
第1回『ハヤカワ「悲劇喜劇」賞』が決まり、野田秀樹・作・演出「MIWA」の受賞が発表された。
この賞は「選考委員(4人)と批評・評論家の劇評意欲を最も奮い立たせる優秀な演劇作品を顕彰するもの」だという。野田地図・第18回公演だったが、美輪明宏をモチーフとした新作。宮沢りえが“MIWA”を主演し、彼女にとっては舞台女優としてこれまで以上に成長した演技が当方には衝撃的だった。
演劇界では久しぶりに新設された演劇賞なのだが、賛否両論が大きく割れたであろう作品への受賞が面白く思えた。
(平成26年2月27日)
〜御曹司のベビーブーム〜
歌舞伎の世界はこの近年、“ミニ・ベビーブーム”のようです。勘九郎には第二子が誕生し、海老蔵にも長男が生まれ、菊之助も第一子の男の子を設けましたのはご承知の通り。亀三郎にも男児が誕生していて、御曹司には揃って後継ぎが次々と出来ました。
そして、日本舞踊の宗家藤間流の当主、勘十郎にもめでたく男児誕生のホットニュースが。昨年12月28日に3400グラムの赤ちゃん。出産予定日は1月2日だつたそうですが、平成25年末のおめでたでした。名前は雄大(ゆうた)ちゃん。
松緑にはすでに長男大河ちゃんがおり、海老蔵、菊之助と合わせて“平成の三之助”と言われた三人に男子が揃ったことになります。また、日本舞踊でもこれで家元藤間流(勘右衛門・松緑)と宗家藤間流に跡継ぎが揃った訳でこれら子供たちが将来の歌舞伎を背負う戦後第四世代ということになります。
勘十郎は7日に行われた宗家藤間流の新年会で誕生を報告。「祖父の名前の一字を入れたいと思っていて、また、人のために何か出来るように、という思いを込めた」と話していました。
(平成26年1月15日)
〜「名優の食卓」〜
月刊誌『演劇界』の2014年1月号(12月5日発売)から「名優の食卓」の連載を始めました。
第1回は九代目市川團十郎です。明治期から昭和期に於ける歌舞伎の名優の好物、また、食卓を囲んだ風景を通して、その意外な素顔や芸の取り組みの一端でも描ければと思っています。
第2回は六代目尾上菊五郎です。ぜひお読み下さい。
(平成25年12月26日)
〜シゲさんの生誕100年〜
「森繁久彌さんの生誕100年をお祝いする会」が20日に東京会館で開かれた。
2009年11月10日に96歳で亡くなったシゲさんは1913年(大正2年)5月4日、大阪枚方市で生まれたので今年がちょうど生誕100年。俳優や発起人は27人。関口宏と中村メイコが司会を務め、思い出を語った壇上には加藤登紀子、樹木希林、黒柳徹子、司葉子、中村玉緒、夏樹陽子、大村崑、西郷輝彦、里見浩太朗らが並んだ。
その業績は限りがないので、舞台の思い出としては「屋根の上のヴァイオリン弾き」のテヴィエを始め、「佐渡島他吉の生涯」、「弧愁の岸」が代表作だろう。
まだ杏子夫人が存命の頃、取材へ行った自宅の庭を回り、美味しい紅茶を振る舞ってくれた事、会社の社員寮まで車で出掛けたそのドライブ中、アイスボックスに収めた氷、ウイスキーを当方が差し出すと、満面の笑顔で「こいつは面白い」と大喜びだった事、愛用のヨットに取材陣を詰め込み、東京湾を回りながらご機嫌で解説しまくっていた事−などを思い出す。
発起人の思い出話は主に芸達者だった事、世話好きだった事だった。そんな中、黒柳が「ねえ、一度やろうよ」と迫られ、丁重に断ったが、その後に再開すると、また「ねえ、一度やろうよ」と誘われたというエピソードを話した。
「私はまんざらでもなかったのですが、あのお年でできたのかしら。後で分かったんですが私だけではなかったのね。あの方の好みは色々で、つまり女性なら誰でも良かった、そんな話をしたかったんだと思います」と笑わせた。いいねえ、シゲさん。「ねえ、一度やろうよ」、この文句、使えるねえ。
来年1月17日からは高島屋大阪店で遺品5万点の中から選ばれた品物が展示される「森繁久彌展」が開かれる。
(平成25年11月25日)
〜山崎屋のヤル気〜
月刊誌『演劇界』10月号のスペシャルインタビュー「芸をつなぐ〜守・破・離」で四代目河原崎権十郎さんへの聞き手を担当しました。
坂東正之助の青年時代、名跡・河原崎権十郎を襲名した裏話、そして今後演じたい役として例えば「勧進帳」の富樫を挙げるなど大いに語り尽くしています。
明るい芸風の山崎屋のヤル気をぜひお読み下さい。
(平成25年9月8日)
〜中村歌江に特別賞〜
平成25年度の第19回「日本俳優協会賞」が決定した。
日本俳優協会賞は中村勘之丞と中村蝶十郎の二人。
日本俳優協会賞奨励賞は新派の井上恭太と中村梅秋の二人。
日本俳優協会賞功労賞は坂東玉之助。
日本俳優協会賞特別賞は中村歌江。
坂田藤十郎が現会長の日本俳優協会では大名題や御曹司を除く歌舞伎俳優の脇役、新派俳優の中から表彰してきた。今回は歌舞伎座が新開場した機会に合わせて特別賞を設けたもの。10月に授賞式を行う予定だ。
(平成25年7月23日)
〜豪華に歌舞伎座特別舞踊会〜
新開場した歌舞伎座で9月27日(午後1時開演)に「歌舞伎座特別舞踏会」が開かれる。
歌舞伎の公演以外では最初になる日本舞踊の公演だ。
上演されるのは@藤間勘十郎、藤間勘右衛門による義太夫・囃子「寿式三番叟」A井上八千代の地唄「八島」B尾上墨雪の囃子「猩々」C花柳壽輔、坂東三津五郎による清元「峠の万歳」。
先代の歌舞伎座では大流派の舞踊会や落語なども上演されていたが、古典芸能の素晴らしさを世界に向けて発信していく文化拠点としての役割を継続していくそのスタートだろう。
宗家藤間流、家元藤間流率いる若きリーダー二人の競演、京舞の井上流の家元、六代目菊五郎の流れを受ける尾上流の宗家、そして花柳流の家元と坂東流の家元の競演、豪華で格調高い舞踏会になるだろう。
(平成25年7月23日)
〜中村魁春インタビュー〜
月刊誌「演劇界」7月号のスペシャルインタビュー「守・破・離〜芸をつなぐ」で二代目中村魁春さんへの聞き手を担当しました。
父・六世歌右衛門の教え、兄・梅玉との絆や苦労、女形の心得、初舞台の思い出などたっぷりと秘話を加賀屋は明かしています。是非お読み下さい。
(平成25年6月11日)
〜女優やめちゃえ!と言わないで〜
2012年度の第38回「菊田一夫演劇賞」が発表され、5月22日、授賞式が開かれた。
演劇大賞が「ええから加減」で共演した藤山直美と高畑敦子がダブル受賞。
演劇賞は安蘭けい、加藤健一、坂本真綾、舞台美術の松井るみ。
永年の功績に対して特別賞が浜木綿子、黒柳徹子。
名古屋公演中の加藤が映像でスピーチ、風邪による高熱のため欠席した浜はメッセージの代読だった。
直美と高畑はともに見栄えがする和服姿で挨拶した。
初めての東宝公演、作品、共演者という「いいご縁を頂きました」と切り出した直美は「心を引き締めて、お客様に喜んでいただく事を目の前に置きまして、次ぎの舞台をやっていきます」
高畑は「きょうこそは落ち着かなければ、と思っています」と話し始めた。「私は直美さんの軽い追っかけで、初めてナマの直美さんにお目にかかったのはトイレでした。(今回の共演は)ただただ無心で、声が枯れました。卓球で言えば動物のような直美さんの球(演技)を無心で拾っていました」
安蘭はこうだ。「サンセット大通り」と「アリス・イン・ワンダーランド」に対しての受賞で「二つの作品は私にとってとても勉強になりましたが、過酷な稽古でした。舞台人として、女優として精進していきます」と結んだ。
黒柳はかつて菊田一夫氏の演出を2作品で受けたという。「菊田先生は『そんな芝居なら女優をやめちゃえ』と叱るのを知っていましたから『先生、女優なんてやめちゃえ!とおっしゃらないで。私、本当にやめちゃうので』とお願いしたら『分かった、分かった』と言っておっしゃらなかったので、こうして続けています」と笑わせていた。
(平成25年5月31日)
〜二都物語・俳優の語録〜
15日に行われたミュージカル「二都物語」の制作発表。俳優の語録を並べる。
井上芳雄・シドニー・カートン(酒びたりの弁護士)
「自分の人生をかけてやりたい。共演の浦井とはともにA型。でも内面は全て違う」
浦井健治・チャールズ・ダーニー(フランスの亡命貴族)
「友情、家族愛、恋愛、人間愛、色んな愛の形を表現したい。ボケと」
すみれ・ルーシー・マネット(美しく心優しい女性)
「緊張している(だけ)。作りものと思いたくない。人生の経験を考えて、入れるというか、何と言うの? つながり? 考えています」
濱田めぐみ・マダム・ドファルジュ(酒場のおかみ)
「激しい役どころ。フランス革命を生きた女性。全精力を使って表現したい」
橋本さとし・ドファルジュ(酒場経営。貴族を恨む)
「若い二人はイケメン。ミュージカル界を代表するフケメンの橋本です」
鵜山仁(翻訳・演出)
「レ・ミゼラブルには負けられない」
公演は7月18日〜8月26日・帝劇。
(平成25年5月20日)
〜市川團蔵のインタビュー〜
月刊誌『演劇界』6月号のスペシャルインタビュー「守・破・離〜芸をつなぐ」で九代目市川團蔵さんへの聞き手を担当しました。
師匠の二世松緑、伯父・八重之助、そして初代辰之助(三世松緑)の各氏から学んだ秘話を三河屋は明かしています。また、同誌では大特集「歌舞伎座開場!」も掲載しています。是非お読み下さい。
(平成25年5月7日)
〜ベストワン2012〜
日本劇団協議会の機関紙「join」がアンケート特集「私が選ぶベストワン2012」で昨年上演された舞台で各部門別のベストワンを選出しています。私も選者75名の一人として選出しました。
作品・「負傷者16人-SIXTEEN WOUNDED」
女優・大竹しのぶ「シンベリン」
男優・津嘉山正種「国境のある家」
演出家・栗山民也「藪原検校」
スタッフ・二村周作「ガラスの動物園」
団体・こまつ座「井上ひさし生誕77フェスティバル2012」の上演
戯曲・「パーマ屋スミレ」
ノンジャンル・ピーター・ブルック「魔笛」
以上が私のベストワンです。
(平成25年4月22日)
〜ある演劇人とのお別れ〜
喫煙を競い合った演劇プロデューサーの木山潔さんが1月20日に亡くなり、お別れの会が3月27日、俳優座劇場で開かれた。
作り続けた作品170本超。「赤い鳥の居る風景」や「やってきたゴドー」らの別役実作品。「桜の園」、「わが町」、「出番を待ちながら」といった翻訳劇。また「はだしのゲン」というミュージカルは海外にも渡った。「赤い鳥の居る風景」、「やってきたゴドー」は自ら演出した。
弔辞というか、思い出を語った別役実、福田善之、小田島雄志の各氏、そして多くの参加者。新劇界のほとんどか集まったような顔ぶれを見ると、彼の人柄、仕事の幅、ネットワークの広さが偲ばれた。
酒席では資金集めの苦労、笑いばかりを狙う演劇への意見、劇団という名の集団の存在意義などをさり気なく、煙草の煙に巻くように囁いていたっけ。
発起人の一人である美術家・石井みつるさんの自宅に咲いた桜の木を舞台上に置いて、桜の枝を献花したお別れの会。好きだった桜、煙草、親しい仲間、新劇の力、演劇の力いまだ衰えず。木山さん、いいお別れ会だったねえ。
力を注いだ「はだしのゲン」が8月23日〜25日に俳優座劇場で、8月30・31日に川崎市アートセンター・アルテリオ小劇場で上演され、9月3日〜10月2日には巡業公演。ぜひ見てほしい。
(平成25年4月2日)
〜笠原の「大菩薩峠」〜
第34回松尾芸能賞の授賞式が3月27日に開かれました。まずは受賞者の紹介。
大賞は花柳流宗家家元の花柳壽輔。
優秀賞が演劇で市川猿之助、笠原章、コロッケ。邦楽で十七弦箏奏者の菊地悌子。演出が謝珠栄。新人賞が文楽太夫の豊竹咲甫大夫、邦楽の新内剛士。特別賞が子供歌舞伎指導の北野勝彦。功労賞が演劇の歌舞伎小道具の湯川弘明。研修助成賞がレビュー集団のスタスでした。
この中で、新国劇の出身であり劇団解散後に当時の中堅メンバーだった18人と結成した劇団・若獅子を率いる笠原章の興奮したような挨拶が良かった。
笠原は「国定忠治」や「宮本武蔵」などを上演し、昨年には「白野弁十郎」、「無法松の一生」という新国劇の極み付きを公演していた。「4年後には劇団結成30周年、また新国劇100年になります」。その時、いよいよ大作「大菩薩峠」を上演したいという抱負を語った。師事した恩師辰巳柳太郎の代表作だ。お楽しみがまた増えた。
(平成25年4月2日)
〜安藤サクラの芸術選奨〜
平成24年度・第63回「芸術選奨」が発表され、贈呈式が3月18日に行われました。
演技部門の推薦委員の一人として出席しました。受賞者を演劇中心に列挙するとー。
文部科学大臣賞は「4」の劇作が対象の劇作家・川村毅、能「定家」他の成果で能楽師・観世清和、舞踊部門では「座敷舞道成寺」他の演技で日本舞踊家・吉村輝章、芸術振興部門で「キジムナーフェスタ・2012」他の成果によって演劇プロデューサーの下山久の各氏が授賞となった。新人賞は演劇部門が「ダディ・ロング・レッグス」他の成果の井上芳雄が受けた。
川村(53)は鶴屋南北戯曲賞も授賞し、15日に開かれた贈呈式に続く晴れの舞台。その南北賞での挨拶が喜びに満ちていたが、芸術選奨は初めてお国から受けたご褒美だった。
「賞をもらうコツは何か?と皆に聞かれるんですが、どうしてなんでしょうね」。祝賀会ではそう話していたが、むしろ南北賞での挨拶を紹介しようー。
「岸田戯曲賞を貰ったのが26歳の時。新宿のゴールデン街で唐十郎さんらに祝ってもらっていたら、土方巽さんの病状が悪くなって唐さんらは病院へすぐ向かってしまった。その時、唐さんは『川村、これからお前は賞をどんどん貰うぞ』と言ってくれた。そんなものかなあと思っていたが、30代40代はまるで縁がなく、今回がそれ以来の受賞です」と笑わせた。そして南北賞について「今回は自信がある、と待っていたら連絡がなかった。その年は唐さんが受賞と聞き、唐さんなら仕方ないと思ったものです」と加えていた。
ところで、芸術選奨の映画部門で新人賞を受けた安藤サクラ(「愛と誠」他の演技)の挨拶に好意が持てた。
「幼い頃から映画を作ることがいかに大変で困難かを間近で見てきましたが、映画という大きなカテゴリーの中で受けられたのかなと感じています。全力で映画と向き合ってきた父と姉、それを支え続けた母。私もこれから一杯、自分にあるもの、ないものも映画に捧げていきたい」
映画部門で大臣賞の夏八木勲、大衆芸能部門で大臣賞の谷村新司らも当方が思う以上に嬉しそうで喜んでいた。ご褒美はいいもんです。
(平成25年4月1日)
〜井上ひさしさん、喜寿〜
3月5日に開かれた「井上ひさし生誕フェスティバル2012謝恩会」を少しだけ報告しましょう。
井上ひさしさんが亡くなったのが2010年4月9日。1934年生まれの井上さんが「生きていたら喜寿」を祝って開催されたのが1月の「十一匹のネコ」から始まり12月の「組曲虐殺」まで8作品を上演したフェスティバルでした。
井上作品が改めて再評価され、観客動員も大成功。謝恩会はその感謝の気持ちを表したものでした。案内状には「美味しいものを食べていただきながら」という一文が入っていて、会場が帝国ホテル。
一文と会場の結び付きがようやく理解できたのが愛娘の井上麻矢・こまつ座代表の最後の挨拶でした。
「私事ですが、私が小さい頃、入ってきた原稿料の全てを使ってここに連れて来てくれました。『美味しいものを食べよう』と連れて来てくれました。中に入っている店、お寿司とか。また、父が原稿を書いた場所で、ここは父が愛した場所でした」。謝恩会は、冒頭に関係者数人の短い挨拶だけで始まり、後はいきなり食事タイム。本当に美味しいものを食べる集まりでした。
麻矢代表はまた「思い切った事をしましたが、来年、こまつ座は30周年。その長さの思いをひしひしと感じています。そして小沢昭一さん、大塚道子さんが亡くなり、あの世はさぞや賑やかだと思います。父は、芝居は一人では作れないとよく言っていました」。井上作品の上演を続ける決意に会場は拍手で応えていました。
(平成25年3月15日)
〜ミュージカル・ベスト10〜
雑誌『ミュージカル』の3・4月号が「2012年ミュージカル・ベストテン」の特集をしています。当方も選出者の一人として選考結果を書きました。
ちなみに選ばれた主な部門の作品第1位が「ダディ・ロング・レッグス」、男優第1位が井上芳雄、女優が濱田めぐみ、演出家賞が原田涼。選出メンバーが何を選んだかの一覧も載っています。ミュージカルファンなら興味深いと思います。
(平成25年3月11日)
〜2012年演劇界の収穫〜
月刊誌『悲劇喜劇』3月号の特集「2012年演劇界の収穫」で「勘三郎、演出力、女優力に拍手」を書いています。@惜しまれて急逝した勘三郎の舞台A蜷川幸雄、栗山民也、鵜山仁という“ビッグスリー”の演出力B俳優の中の女優力として総括しました。同誌では多数の評論家らに「収穫」のアンケートも掲載しています。ぜひ、お読み下さい。
(平成25年2月10日)
〜「アニー」は泣けるミュージカル〜
泣ける芝居に限りはないが、ミュージカルとなるとたった3作品というのが独断的結論なんですなあ。
一つは「ラ・マンチャの男」、二つ目が「レ・ミゼラブル」、三つ目が「アニー」。今回も間違いなく涙がこぼれる、と思う「アニー」が東京・青山劇場で4月20日に開幕し、8月には大阪、鳥取、名古屋で上演される予定だ。
1月31日、制作発表に行ってきましたよ。日本初演が1986年4月。以来28年目。いやはや、よくぞ続いたもので〜す。毎回見ていて、泣く。年齢のおかげて涙腺が脆くなった? いや、初演から泣いてましたな。その時は、いきなりやって来るんです。
いつか両親が迎えに来てくれるんだ、と信じる孤児院の子供たちが歌う場面。いとおしく、可愛いく、かわいそうで…もう、ウルウルですよ。
日本初演の制作発表にも、実は出席しているんですよ(いや〜、古〜)。ある記者が「今時、孤児院のストーリーなんて、日本人は理解できると思います?」なんてバカな質問をしたもので(私ではありませんよ!
)。ところがどうです。28年も続くロングラン。しかも毎回のオーディションには1万人近い子供が応募する人気ミュージカルに成長したんです。
歴代の役柄ベスト1は、ウオーバックスは上條恒彦、ハニガン先生は夏木マリ、グレースは岩崎良美、ルースターは本間憲一というのが独断と偏見の持論。過去、宝塚歌劇出身者は11人が出演しているし、アニー役からはオトナの女優に育った子供も多い。
ことしも、また、ウルウルと泣きに行きましょう。
(平成25年2月6日)
〜四季の大勝負、リトルマーメイド〜
4月7日に四季劇場・夏(東京・大井町)でロングラン公演を開幕させる新作ミュージカル「リトルマーメイド」が正式発表になった。
劇団四季の久しぶりの大型ミュージカルの海外新作だ。
特長を絞る。
@ディズニーミュージカルの第4弾である。
Aフルオートメーションの最新フライング技術が見られる。
B主役の配役がダブルキャストである。特に女優二人は韓国出身、中国出身であること。
@は「美女と野獣」、「ライオンキング」、「アイーダ」に続くディズニーとの提携。前3作で得た協力関係とノウハウがフルに生かされるだろう。
Aは一番興味が湧く。
地上世界に憧れる人魚姫アリエルが人間の美しい王子エリックに恋をする−というシンプルな物語の縦軸だが、歌うのは大半がそのフライング中だという。
主人公アリエルを始め、海の中に生きる魚などの生き物が実際に泳いでいるように見える秘訣がこのフライングになるらしい。
B主役だが、人魚姫アリエルが韓国出身の谷原志音と中国出身の秋夢子。谷原は「ライオンキング」でヒロインのナラを演じ、秋は「アイーダ」と「エビータ」でタイトルロール。王子エリックは大阪出身の竹内一樹と、島根県出身の上川一哉。竹内は「赤毛のアン」でギルバート・プライス、上川は「春のめざめ」のメルヒオール、「ユタと不思議な仲間たち」のユタを演じており、この4人とも実力主義で選ばれたという。
創立60周年記念公演の大作の発表だったが御大の浅利慶太氏は出席しなかった。後続に全て任せたそうだが、これは極めて珍しい事態だった。
さて、主題はアリエルの成長物語と言えよう。
海中から地上へ、成長から独立、そして夢の実現。少女から娘へ。来日したヨーロッパ版演出補のクリスチャン・ダーハムさんは「アリエルと父トリトンの関係、特に娘を手放す決断のタイミングに注目してほしい」と話していた。女性の成長物語。ここにキーワードがある。
(平成25年1月31)
〜さぶちゃん、喜寿への挑戦〜
さぶちゃんが昨年7月に初めて進出した明治座の今年の公演が発表になった。3月・明治座、6月・大阪・新歌舞伎座、11月・博多座での三大都市上演になった。
作品は芝居が「伊那の勘太郎・信州ひとり旅」、ショーが「北島三郎、魂(こころ)の唄を…」。演歌界の大御所・北島三郎による“さぶちゃん時代劇”と“さぶちゃん演歌”の舞台になる。
新宿コマ劇場が消えて以降、男性演歌歌手には一気に冬の時代を迎えている。大劇場で芝居とショーの二本立て公演を続けて打てるのは、もはや北島御大一人と言っていい。わずかに氷川きよしが頑張っている位だ。
いくら芸能活動を続けても毎年のように舞台に立てるほど現在の商業演劇は甘くない。北島本人の魅力は当然だが継続こそ力なり−と座長公演を打てるのは並大抵でない。企画力、ファミリー力、そして何より一回一回のステージを全身全霊で打ち込む精神力。ここが他の人と違う。さぶちゃんの偉さである。
さて、今回の舞台−
「新しい年を迎えてありがとうという気持ち。また舞台に立てる誇りと嬉しさを感じています。私も10月で77歳を迎えます。この年でも舞台に立てるのかとお客さまに感謝です。大衆の歌といいますか大衆劇といいますか日本の演歌を歌い、皆さんと触れ合えればいいなと思ってます」
この挨拶の後の質問に答えたのが、さぶちゃん節。
「この頃、時代劇は今ひとつ、パッとしないと思います。分かりやすく楽しんでもらえれば−という中、一つだけ今もこれからも大事だと思うものを入れている。それは親子の情愛、絆といいますかナ」。喜寿を迎える今年のさぶちゃん。。「皆さんに心配かけるようになった時は、ボクは引退します。でも、まだ動けるかな」。挑戦、これを何度も強調していた。
(平成25年1月31日)
〜極私的歌舞伎大賞〜
月刊誌「演劇界」2月号の特集「2012年歌舞伎総ざらい!」の中で「極私的歌舞伎大賞」を書いています。独断として勘九郎、中車をダブル大賞としました。ぜひともお読み下さい。
(平成25年1月10日)
〜市川雷蔵の歌舞伎と映画〜
月刊誌「演劇界」12月号の巻頭大特集「歌舞伎と映画」で「銀幕を飾った俳優・市川雷蔵」を書いています。歌舞伎俳優としての初舞台や襲名、その間の苦悩などと映画俳優として歌舞伎との関係も紹介しました。ぜひお読み下さい。
(平成24年11月12日)
〜新派のラインナップ〜
10月の三越劇場で「新派名作撰」に参加している新派は「滝の白糸」と「麥秋」の2本立てを11月3日〜18日に京都・南座で、11月20日〜25日に福岡・博多座で上演。来年1月は三越劇場で新派125年記念「新春新派公演」として「口上」と、木下恵介生誕100年として「お嬢さん乾杯」を上演する。また、2月には新橋演舞場で劇団松竹新喜劇の俳優らとの合同で「二月喜劇名作公演」を。6月(3日〜23日)には三越劇場で宮本研・作「新釈・金色夜叉」を水谷八重子、波乃久里子、英太郎、風間杜夫らで上演する予定。
(平成24年10月12日)
〜澤瀉屋四人同時襲名の劇評〜
月刊誌『演劇界』9月号に新橋演舞場七月公演「七月大歌舞伎」の劇評を書いております。二代目猿翁、四代目猿之助、九代目中車襲名、四代目團子初舞台公演です。6月公演と同じく澤瀉屋一門の結束、熱気、猿翁の復帰、猿之助の「黒塚」の素晴らしい出来、中車の鉄太郎の気迫、團子の将来性ー。とにかく中車に労いの言葉を送りたいものです。
〜上半期の収穫〜
月刊誌『悲劇喜劇』9月号に「今年度上半期の収穫」特集で私も演劇界の収穫と思う公演について総括してみました。歌舞伎界の澤瀉屋一門の襲名、野田秀樹の「THE
BEE」そして井上ひさし生誕77フェスティバル2012連続公演をベスト3としました。『演劇界』ともどもお読み下されば幸いです。
〜香川照之さん親子にインタビュー〜
月刊誌『演劇界』7月号の企画で9代目市川中車、4代目市川團子のお二人にインタビューしました。巻頭大特集の「澤瀉屋四人同時襲名」の中で香川照之さん、子息政明さんの親子インタビューです。
お二人の話を通して痛感したのは中車さんの燃える決意、父・猿翁さんまで流れてきた歌舞伎界の血流を絶やしてはいけないという思い、子息との想像を超える絆、その團子君の規格外れの人柄・才能の素晴らしさだった。詳細はぜひ、同誌をお読みください。
〜今から夏休みの観劇計画を〜
何事も準備・計画が大事。今から夏休みの観劇をしたい人に8月・東京周辺の演劇公演の予定を紹介したい。
A)ミュージカル
★帝国劇場「ラ・マンチャの男」。8月3日〜8月25日。演出・主演・松本幸四郎。出演・松たか子、上條恒彦、松本紀保。
★東京宝塚劇場・月組「ロミオとジュリエット」。8月10日〜9月9日。出演・龍真咲、明日海りお、愛希れいか。
★青山劇場「ミス・サイゴン」。8月22日〜9月9日。出演・市村正親、笹本玲奈、知念里奈。
★シアタークリエ「ソングス・フォー・ア・ニュー・ワールド」。8月1日〜8月7日。演出・田尾下哲。出演・浦井健治、濱田めぐみ。
★東急シアターオーブ「ウエスト・サイド・ストーリー」。7月18日〜8月5日。来日ミュージカル。
★CBGKシブゲキ「Bitter・days, Sweet・nights」。8月7日〜8月11日。作・演出・G2。出演・橋本さとし、新妻聖子、堀内敬子。
B)ストレート・プレイ
★明治座「大江戸緋鳥808」。8月4日〜8月27日。原作・石ノ森章太郎。演出・岡村俊一。出演・大地真央。
★三越劇場「明日の幸福」。8月8日〜8月19日。原作・中野實。演出・石井ふく子。出演・若尾文子、西郷輝彦、水谷八重子。
★シアターコクーン「ふくすけ」。8月1日〜9月2日。作・演出・松尾スズキ。出演・古田新太、大竹しのぶ、阿部サダヲ。
★赤坂ACTシアター「十三人の刺客」。8月3日〜8月18日。脚本・鈴木哲也。演出・マキノノゾミ。出演・高橋克典、坂口憲二、釈由美子。
★さいたま芸術劇場「トロイラスとクレシダ」。8月17日〜9月2日。作・W・シェイクスピア。演出・蜷川幸雄。出演・山本裕典、月川悠貴。
★ル・テアトル銀座「ウサニ」。8月3日〜26日。原作・脚本・野島伸司。演出・永山耕三。出演・溝端淳平、高岡早紀、山本耕史。
★銀河劇場「銀河英雄伝説」。8月3日〜8月12日。原作・田中芳樹。演出・宇治川まさなり。出演・中川晃教、横尾渉。
★サンシャイン劇場「サイケデリック・ペイン」。8月22日〜9月11日。演出・いのうえひでのり。出演・福士誠治、北乃きい、綾野剛。
B)小劇場
★青山円形劇場「叔母との旅」。8月2日〜8月15日。原作・グレアム・グリーン。演出・松村武。出演・段田安則、浅野和之、高橋克実。
★ザ・スズナリ「くじけまみれ」。8月3日〜8月12日。脚本・福島充則。演出・木野花。出演・高田聖子、丸山厚人、政岡泰志。
★ザ・スズナリ「シュペリオール・ドーナツ」。8月25日〜9月10日。作・トレーシー・レッツ。演出・大杉祐。出演・加藤健一、有馬自由、田根楽子。
D)伝統芸能
★新橋演舞場・花形歌舞伎・『桜姫東文章・伊達の十役』。8月4日〜8月23日。出演・市川海老蔵。
★国立小劇場・稚魚の会・歌舞伎会合同公演・『絵本太功記・身替座禅ほか』。8月23日〜8月26日。出演・市川猿琉、市川左字郎。
★パルコ劇場・文楽「其礼成心中」。作・演出・三谷幸喜。出演・竹本千歳太夫、豊竹呂勢太夫。
(注)期待したいお勧めのトップクラスは@「ラ・マンチャの男」A「叔母との旅」B「其礼成心中」。二番手が@「ソングス・フォー・ア・ニュー・ワールド」A「ウエスト・サイド・ストーリー」B「トロイラスとクレシダ」。俳優では浅野和之、堀内敬子、市川猿琉。ついでに初めての文楽演出の三谷幸喜。
東京生まれ、団塊の世代。ジャイアンツ情報満載のスポーツ報知で演劇を長く取材。演劇ジャーナリストに。現代演劇、新劇、宝塚歌劇、ミュージカル、歌舞伎、日本舞踊。何でも見ます。著書には「名優の食卓」「新・東海道五十三次」「歌舞伎役者 市川雷蔵」。鶴屋南北戯曲賞、芸術祭などの選考委員を歴任。毎日が劇場通い。