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大島幸久の『何でも観てみよう。劇場へ!』

アイドル夢の世界

北山宏光の素直な演技 NEW!               

 2年ぶりに舞台に出演した北山宏光の東京グローブ座『あんちゃん』(作・演出・田村孝俊、7月23日まで)は後味が清々しいものだった。

 プログラムの中で感心した点がいくつかあった。作品に取り組む北山の言葉だ。
  
 「作品を自分の中に落とし込む」

 「キャラクターが粒立っていく」

 「役を立体的に見せようとする」

 「言葉の刺さり方」…。

 初のストレートプレイ出演ということだが、以上の表現は舞台人が好んで使うもので、舞台経験が目立って豊富とは思えない若手俳優(当人によれば32歳)にしては驚きもしたし、実に感心した。

   『あんちゃん』は父帰る≠フ物語である。北山が演じた主人公・凌が幼い頃、浮気の末に家族を捨てた父が20年ぶりに帰ってくる。2人の姉がいる凌を父親は「あんちゃん」と呼んでいた。

 台詞に「もう30歳だし」とあるのは、まだアルバイト生活の自分に満足していないのだ。北山は妙に役柄を作らず、ごく自然で素直な演技に好感を持った。黄色い通学帽にランドセルを背負った小学生でも登場したが、少しも違和感がない。

 いちいち煩い姉たち、自分を庇う母親にも反論する。女手一つで育てられ、父親が不在の中の男の子をリアルに演じていた。それを姉たち、母親との会話で実現した。「言葉の刺さり方」を工夫した成果だろう。ストレートプレイの経験をドシドシと積もう。(8月5日〜8日は大阪・森ノ宮ピロティホールで)。

 (平成29年7月18日)

坂本昌行が主役でステップ                

 V6の坂本昌行については『シルバースプーンに映る月』と『戸惑いの惑星』での演技を書いているが、ついにと言うかようやくと言うか、新国立劇場の舞台で主役の座に到達した。ウイリアム・サローヤン・作『君が人生の時』〈7月2日まで〉のジョーがその役だ。両親がアイルランド系の出身。つまり、翻訳劇の主人公である。

 主な舞台はサンフランシスコの波止場の外れにある酒場。ジョーは朝から晩まで毎日、ここで好物のシャンパンを飲んでいる。かと言って単なる酔漢ではない。職業は不明。ところが、あり余る金を持っている。金が金を産む仕事をしているようだ。不思議な男だ。
  
 演じるには、やっかいな役柄と言える。坂本は1幕の板付きから登場していた。幕が開いた時から既に出演しているのが板付き。場所は、広いスペースの酒場の窓際に近い上手のテーブル席の椅子に座っている。この最初から長い、とても長い時間、足を組んでシャンパンを飲み、座ったままの演技。計ってみれば、何と53分後に席を立ち、女のいるテーブルに移った。

 弟分のトムに買わせに行かせた10ドルの馬券が当たり、80ドルに増えた。さらに買わせた大量のおもちゃで遊び、そのおもちゃを売春婦キティにあげてしまう。鋭い勘の持ち主、優しい心を持つ男だと分かる。坂本はさりげなく演じていくのである。ジョーは片足が悪い。足を引きずって歩く。台詞だけの演技が延々と続くのである。歌を大声で歌う場面があるが、持ち味の身体能力の高さ、あるいは身振り手振りの芝居を生かすのでもない。いわば、制約が多い1幕の役柄だった。

 2幕では横暴な男を銃で撃ち殺そうとする場面がある。しかし、弾が込められていないため殺人は失敗する。その時の怒りの演技、床にへたり込む芝居でようやく表現力を見せたのだった。「孤独は人間にとって必要だ」という台詞の語り口も印象に残る。

 台詞術と存在感だけで演じ抜いたようなストレートプレイ。坂本が舞台人として階段を一つ登ったのだった。
         
 (平成29年6月21日)

ブスと美女のショコタン2態                

 昨年5月にミュージカル『ブラック・メリー・ポピンズ』で初舞台を踏んだショコタンこと中川翔子に「合格!」と太鼓判を押したが、あれ以来に見た“妄想歌謡劇”というシアターコクーンでの『上を下へのジレッタ』はどうか。与えられた役が奇妙だから半信半疑で渋谷へ向かったのだった。

 アンナという娘で前回は全10曲を歌ったが、今回も10曲を越える曲をこなしながら、歌って踊って演技をする難役と言えた。
  
 演じたのはスター歌手を目指してはいても失業中でいつも空腹の越後君子。この娘は食事をとると不細工な、つまりブスになるため覆面歌手の晴海なぎさにさせられ、空腹に戻ると新たな芸名・小百合チエという絶世の美女になるー。

 レギュラー出演中の「ウチくる!?」で、美味を口にしたとたん、宇宙人のような奇声とコトバの表現で“食レポ”をしているショコタン。稽古に入ってから「お腹が空いた」という台詞を何度も言うため本当にお腹が空いてしまって食事をしたので2`も太ってしまったーとプログラムに書いていた。

 美女になって歌い、早替りでブスになっては歌い、ドレスアップした衣装はシンデレラのようで、つかこうへい流の表現を借りれば「ブスに生きる権利はない」というような不細工な顔とデブの姿で笑わせた。とにかく歌は上手い。悪戦苦闘していた主役・門前市郎を演じた横山裕と比べて、伸び伸びと役に入っていた。

 目標の「楽しく歌い踊りたい」の通り、初舞台より余裕を見せていたショコタン。歌うコメディエンヌへの道へ、また一段駆け上がった。
         
 (平成29年5月17日)

松岡昌宏に花束を!                

 ぶっ飛んだぜ、松岡昌宏。やるじゃねえか。体中にトゲを生やして誰も近づけないハリネズミのような男ダニー。プログラムで松岡自身が表現した「野良犬」のような男を演じた。乱暴な口をきくダニーを真似た言い回しをまず最初に書いてみたんだぜ!

 紀伊国屋ホールで見た『ダニーと紺碧の海』は松岡のダニーと土井ケイトのロバータによる二人芝居。1時間40分、休みなしの対話劇、というより言葉、会話、怒鳴り合い、けなし合い、そして愛を求めあう台詞ー。とにかく、よくまあ、しゃべり尽くす男女なんだろうという舞台。
  
 上手通路から舞台へ上がってバーでビールを飲み始め、大股開きや足を投げ出し、既にかなり酔った演技の松岡。ゲロを吐く場面、うつろな目付き。1場では笑いが1回だけ、ロバータの家のベッドから始まる2場では強引に唇を奪われてキスされ、3場では「俺はお前を許す」という台詞がシリアスだった。

 舞台出演は4年ぶりという。ドラマなど映像でのこれまでの役柄の印象、素顔を見た目から考えれば、ダニーはまさに適役だろう。しかし、紀伊国屋ホールと言えば若手劇団の登竜門としてステップアップするために目標にする中劇場だ。現代劇、新劇を好む観客に親しまれてきたが、松岡はあえて演技力を試される中劇場への出演、さらに書けば二人芝居の制約や本格的な翻訳劇に挑んだ勇気に驚いた。

 若手演出家の注目株、藤田俊太郎と組んで台詞の背景や意味、感情の変化の切り替えはタレント、歌手という存在ではなくまさに舞台俳優松岡昌宏であった。

 短い言葉で呟くスマホ・コミュニケーションへの挑戦と言える会話劇。松岡に青いバラの花束をあげよう。3年に1回の舞台と言わずに海老蔵と競って、ドシドシやろうぜ、松岡君!
      
 (平成29年5月17日)

上田竜也に新たな挑戦を!                

 KAT-TUNのメンバー上田竜也が座長として初めてコメディに挑戦した東京グローブ座『新世界ロマンスオーケストラ』の感想を正直に書けば物足りなかった。その最大の理由は上田の演技ではなく、脚本を主体として作品自体にあったと思う。

 バンドのボーカル、拓翔が上田の役。6股をかけるほど女の子にもてるが、メジャーにのし上がるための新曲に悩んでいる。絶対に別れないと迫る恋人の玲奈に突然、別れ話をするのだ。6股の「6」という数字、さらに次々と女の子と付き合う背景が最後に明かされるが、上田に求められるのは抜群の身体能力を使った演技、出ずっぱりによる膨大な台詞量の話術、そして喜劇のセンス。見ていて気の毒になる位の体力勝負でもあった。
  
 脚本・演出の根本宗子は初めて男性主演の作品だという。プログラムでは上田について「真面目でストイックで賢いイメージ」を持っていたとか。ここに物足りなさを感じた理由があった。交際する女性(女優)には女の子の心理をうまく乗せた台詞だが、主人公の拓翔は受け身の立場と台詞に偏っていた。

 乱暴で下品な表現の長台詞が多く、それも大声、怒鳴り声の演技になっていた。これも演出なのだろうが…。

 プログラムで「家へ帰ると食事のときも風呂に入るときも台本を読み、起床したらまた台本を読んで」と書き、悪戦苦闘した様子が目に浮かぶ。

 二人だけや数人とのダンスシーンがあれば、歌ありラブシーンあり、そして、スピード感豊かな動きの芝居。身体能力の高さは証明されたが、どうせならもっとワルのキャラクターで見せたかった。彼の個性を見極めた作品を与えたいものだ。
         
 (平成29年5月17日)

三宅健はブス、タッキーはきれい                

 12年目に突入した新橋演舞場の『滝沢歌舞伎2017』。4月6日の初日の翌日、7日に観劇したが、考えてみれば「歌舞伎」の前に個人名を付記した「歌舞伎公演」など実に珍しい。主演・滝沢秀明の人気、魅力があってこその長く続く舞台なのは自明の理だ。

 今年のゲスト、V6の三宅健が2年連続の出演。愉快だったのが二人が生化粧で女形に変身していく場面だった。
  
 化粧をしながらの三宅。「新聞を見て、昨日の自分はおブスだなあと。きょうはちょいブス。昨日も睫毛を描くのを忘れたんだよね。滝沢はきれいだ」。

 それに対して滝沢。「そんなことなんか、知ってるよ」。大喜びの客席になった。

 幕開け、いきなり白燕尾服のタッキーは舞台中央からフライング(宙乗り)。上手の2階席からも飛んだりと1幕はフライング3回。二人が打ち鳴らす和太鼓の演奏が圧巻。大きな太鼓の上でタップを踏む三宅、ドラムを叩き尽くすタッキー。新しい和の世界を目指して、二人のコラボレーションを全面に出した構成。コラボというよりバトルといった舞台になった。

 女形になった二人は「道成寺」の白拍子花子で踊り、衣装の引き抜きも。2幕の「鼠小僧」では大量の本水を使った立ち回り。フィナーレでは二人同時のフライングを披露。腕を上げた三宅を得てタッキーのパフォーマンスも一段と進化したのだった。
     
 5月4日には通算上演回数が600回になるという。『滝沢歌舞伎』は健在だ。
    

 (平成29年4月11日)

堂本光一と「SHOCK」の凄さ                   

 ジャニー喜多川の作・構成・演出『Endless SHOCK』を見た2月6日は通算1431回目、千秋楽の3月31日には1500回になるという。走り続けてきた大記録。とてつもない金字塔だろう。

 主演・堂本光一。走り続けてきたこのエンターテイナーは称賛される。オフ・ブロードウエーで上演してきた作品の千秋楽の場面。屋上に立ったコーイチが歌う「きっと夢はかなう」は何回聞いても美しいメロディが魅力的だ。走り続けてきた意味を自問自答し、夢はずっと続く−と信じる。この主題が作品そのものであり、堂本のものである。
  
 出演者を大幅に代えた今回、美術がこれまで以上にカラフルになり、共演者の衣装も白や黒の単色が増えた。堂本が黒づくめの衣装。帽子をかぶり、長いダンスシーンは圧巻。一向に衰えを見せない証である。長い殺陣からいつもの階段落ちになるが、その迫力は不変だ。

 芝居の場面を除くと、ダンス、ショーの場面が一段とスピードアップ、早いテンポになったと思えた。群舞の振りも大きく変更され、より集団性が強くなったと思う。フライングは1幕、2幕とも3回ずつ。走り続け、矢尽き、刀折れて、桜の元にて我死なん。燃え尽きて天国での自由な世界へ行く堂本のラストシーンは何度見ても感動を呼んだ。
 
 (平成29年2月12日)

トニセンを見よう!                   

 坂本昌行、長野博、井ノ原快彦による“トニセン”三人が「これまで見たことのないもの、やってないものをやりたい」と挑戦したのが東京グローブ座のG2・作・演出『戸惑いの惑星』(2月14日まで。この後、福岡、大阪)だ。面白い。触発された。トニセンのファンならずともぜひ見てほしい。

 物語は複雑なので省略するが、過去、未来、そして現在という時空を超えて旅をする不思議な舞台を作り出した。G2の傑作だろう。
  
 三宅を演じた坂本は、手紙の代筆屋・長谷川役の井ノ原に果たし状を依頼するヤクザの場面が実に巧い。さらに、母親という女装の役もやった。

 由利を演じた長野は代筆屋にやってきた離婚願望の主婦も演じた。文面にいちいち文句やいちゃもんを付けて、結局、亭主に口頭で言うことにするやっかいな女。女装しての芝居が面白い。

 井ノ原の役は長谷川。白髪の老教授という老け役にも変身して、ヨチヨチ歩く場面などで笑わせ、見せ場を作った。現在、NHK朝の情報番組「あさイチ」にレギュラー出演しているが、プログラムでゲストを迎える前の準備を話しているのに感心した。

 G2はこの舞台の中で、宇宙には果てがあるのかを考えさせる。138億年前のビックバンに想像を働かせ、宇宙には果てがあること、この途方もない世界観を説くと同時に母親、妹、友人、先輩、恩師という身近な人間関係を描き、未来、過去、今に登場人物を運ぶのである。
     
 遠視眼を持つことの大切さ、近視眼でも見ることの再確認−。演技で言えば坂本が格段に上達した。トニセンの舞台を見て、若い女性が哲学を持ち、宇宙観を持って欲しいと思うのである。
    

 (平成29年2月11日)

女優小泉今日子の声                   

 小泉今日子が謎の女マリーを演じた『シブヤから遠く離れて』。作・演出が岩松了、劇場はシアターコクーン。2004年に初演されて12年ぶりの再演。初演の時、キョンキョン38歳、今回は50歳になっていた。

 マリーは廃墟となった屋敷の一部屋に住みついている。屋敷には色々な人が出入りするが、マリーは部屋に男を引き込む。娼婦のようだ。それでも、金のためだけではないらしい。身の置場がないのか。何物から逃れて身を隠しているようだ。アンニュイのようなムードを漂わせる小泉今日子のマリー。“謎の女”に違いない。
  
 舞台女優としてのキョンキョンは何より、その声が独特だ。どう表現すればよいのか。甘ったるく、透き通っていて、蜂が吸い寄せられるような花の蜜を含んでいる。

 下着姿になって庭を歩く芝居、青年ナオヤとの交流、彼女を愛するアオヤギとの距離感、田舎から出てきたアオヤギの父への嫌悪感。人生を捨ててしまった諦念も浮かぶ。

 50歳になったキョンキョンにこんな役がピタリと似合う。

 (平成28年12月29日)

舟木一夫は今もアイドル       

一日の生活イメージ 

 新橋演舞場で12月2日開幕した「舟木一夫特別公演」を6日にじっくり観劇。芝居「華の天保六花撰・どうせ散るなら」と「シアターコンサート」で見せた舟木の魅力の神髄に目を凝らしたのだった。

 芝居で彼の役は剣客・金子市之丞。小悪党六人衆の一人で、まず、舟木の演技。着流し、黒羽織に袴など5回着る和服姿が実に板に付いていた。それは袖と裾のさばきが巧いからだ。
  
 次は“演技する目”である。その目付き、特に流し目になると台詞とのバランス、逆にアンバランスを使い分けた。間合いのいい台詞術では台詞をあえて切ってしゃべり、メリハリを付けるやり方。仕種では腕組みをしたり、右手を腰に話したり、懐手にして花道を去っていく。
  
 そして化粧。白粉を多めにした顔化粧だから、その色白の顔が若く見える。
  
 以上3点。長谷川一夫、大川橋蔵からの直伝か、大先輩を注意深く観察して身に付けたのだと思う。大詰の大立ち回りでは「どうせ散るなら、ここらで潮だ」と派手に散った。
  
 「シアターコンサート」では昼公演での全16曲。この日は25人の女性ファンからプレゼントを一人一人握手しながら、歌いながら受け取った。トークでは「今年はピピッと寒くなりませんね」「大立ち回りでは立っているのがやっとでした」「2、3日前に風邪を引いた。咳が止まらない今年の風邪。気を付けてくださいね」「先輩歌手は整然と歌っていましたが、ボクたちの世代は坂本九さんあたりから一緒に楽しもうという風になった」と実に面白く話す。途中、テニスラケットでサインボールを客席に打ち返すサービス。そして当方が大好きな「学園広場」になった。「高校三年生」では手拍子が起きた。「学園広場」は静かに聴きながら上半身を左右に揺らすファンが多かった。いつもの光景だが、芝居といいコンサートといい、舟木のステージは華があり、艶があり、色気がある。12月12日には72歳になると自己紹介した。おっと、当方は12月13日生まれ。昭和30年代に青春時代を送った歌手と観客の一体感。だから、歌手舟木一夫は今もアイドルなのである。
  
 ちなみに公演限定の「舟木ごのみ御膳」がある。八寸は玉子焼き、ローストチキンバジル風味など。御造りは鯛と鮪。煮物は豚の角煮や揚げ豆腐蟹餡かけなど。御飯は梅ちりめん雑魚、香の物、そして吸い物だった。
 
 (平成28年12月7日)

SMAPへ余計なお世話                   

 年内解散を発表したSMAPのメンバー5人の今後を考えた。余計なお世話と言わば言え。それぞれ、俳優として舞台で演じれば面白いと思った作品を並べる。

 稲垣吾郎(42)
  『キャバレー』のMC
  『ブラッド・ブラザース』の双子の兄

 草なぎ剛(42)
  『リチャードV』(シェイクスピア)
  『華岡青洲の妻』の青洲

 香取慎吾(39)
  『ブラッド・ブラザース』の双子の弟
  『決闘!高田馬場』の安兵衛

 木村拓哉(43)
  『鶴八鶴次郎』の鶴次郎

 中居正弘(43)
  『夏の世の夢』のパック
  松竹新喜劇作品

 俳優として舞台に出演した稲垣、草なぎ、香取の演技は何回も見ている。特に稲垣、草なぎの二人は舞台がかなり好きなのだろう、と思った。すでに各メンバーは個人として舞台活動をしてきたのだから、解散後はそれぞれの可能性を広げる役柄を選べばいい。

 中居には喜劇役者としての才能が潜んでいるのではないか。『夏の世の夢』のいたずらな妖精パックはピッタリだ。

 木村には新派劇の名作を考えた。宮沢りえ、あるいは米倉涼子の鶴八で鶴次郎。さて、いかがかな。

 香取には時代劇が似合う。豪快な武士、愛嬌のある侍。ミュージカルも似合う。『ブラッド・ブラザース』で稲垣と半ズボンの双子兄弟とはどうじゃいな。

 草なぎには演技派の役柄がいい。『リチャードV』の極悪人リチャード、『華岡青洲の妻』の気骨の医師。見たいな。

 稲垣には大いに期待している。舞台俳優としてだ。『キャバレー』での燕尾服姿、格好いいに決まっているさ。

 ステージ(S)、ミュージカル(M)、アセンブル(A)、ピープル(P)という訳で新たな出発の「SMAP」。東京グローブ座を本拠に演劇展開を待っているぜ!

 (平成28年8月30日)

ショコタンの初舞台                一日の生活イメージ

 中川翔子が初めて舞台に挑んだミュージカル『ブラック・メリーポピンズ』(世田谷パブリックシアター)で、彼女に合格点を与えようと思う。

 韓国で誕生したこの心理スリラーミュージカルは、舞台を初めて経験する俳優にとっては決して容易な作品ではない。出演者は5人だけ。2014年7月に本邦初演の時、一路真輝、小西遼生、良知真次、上山竜治、そして音月桂。中川は音月に代わって初参加したのだが、血の繋がらない養子の四兄妹の中で一人だけ娘のアンナという役柄。一路を始め舞台経験が豊富な共演陣に混じっての、ソロはないものの全10曲の歌をこなすのは並大抵のことではなかったのではないか。

 アンナが置かれている立場は、後半になって衝撃的な体験が明らかになるが、種明かしはスリラー劇ではタブー。それでも幕開けから注意深く見ていると、謎を持った娘だと分かる。それは演出のおかげと同時に、中川の演技力でもある。

 テレビの「ウチくる?」を見ていると、うるさいだけのおバカなバラエティ族かと思っていたが、これは訂正しよう。歌手でもあるそうだが、共演者に必死に追いついていく姿勢に好感が持てる。

 プログラムの中で子供の頃なりたかった職業について、漫画家とプラネタリウムの掃除をするお姉さんとゲーム会社の受付係と答えていたのが独特。

 辛いことがあった時、何をするかでは、爆買いも爆食いもするし、猫のお腹にも埋もれることもあるとか。

 劇中、子供時分に兄たちとふざけて遊ぶ場面が多く出る。椅子取りゲームで負けん気の少女を演じる芝居など、驚くほど自然で面白い。舞台女優の才能を示したと思う。

 今の自分のキャッチコピーを付けていた。

 「どうした、落ち着け!俺!(笑)」。

 髪の毛をどんどん短くして、飲めないはずのお酒にも嵌まり、次々と今までやらなかったことにもやっているのがその理由らしい。

 初舞台を経て、次々と舞台の依頼が舞い込むだろう。いけ!ショコタン!

 【写真】撮影:難波亮

 (平成28年5月24日)

タッキーの心意気?                  

 11年目の『滝沢歌舞伎・2016』が一新された。新橋演舞場の名物になった公演だ。「春の踊りは、ヨ〜イヤ、サ〜」。このタッキーの初音で始まる第1部はいきなりフライング3連発。舞台中央から、また、客席上手の2階からタッキーが空中を飛ぶと一気に雰囲気が凝縮する。

 さらに空中の立ち回りがあれば和太鼓の演奏。舞台上の早化粧コーナーで変身する中、タッキーと三宅健がマイクを持ちながらの掛け合い。タッキーは三宅に4時間の直談判で出演を依頼したという。

 幕切れはその化粧場面からタッキーは若衆から女形へ、そして鬼女へ、三宅は若衆へ。

 2部に移ると、今回はねずみ小僧。タッキーは黒装束の姿で天井近くから登場し、フライングなどで舞台を走りまくる。この2部は物語になっているので、若い連中が江戸娘とか外国人の役を演じる趣向が笑わせる。

 そして本水をこれでもかと使った大立ち回りでは客席前方のファンがキャーキャーと叫ぶ中、水が飛んでくる。

 伝統芸能を通して日本人の心、日本の四季の素晴らしさを表現し尽くす。一新された『滝沢歌舞伎』。全治3か月の骨折をした足を引きずりながらも痛みを一切見せない三宅。二人が引っ張る公演は「やり抜く」という心意気が溢れていた。

 (平成28年4月20日)

堂本光一のアップとは?                  

 堂本光一が主演の「Endless SHOCK2016」は胸ワクワクで時間を感じさせなかった。

 2月5日に見たのは通算1349回目。超人気のシリーズだが、今回は特に三つのアップ≠痛感したものだ。@レベルアップAスピードアップBパワー(スケール)アップである。

 堂本のレベルアップの第一は演技、特に台詞術。例えばシェイクスピア劇の「リチャード3世」では強く発声できるようになったから、台詞が明確に伝わるし、役の輪郭もはっきりしてきた。

 スピードアップでは振り付け、特に群舞の素晴らしさはどうだ。女性アンサンブルなどは一糸乱れず、複雑で多彩なダンスをキレ良く踊る。そのスピード感が心地良い。大したものだ。堂本はその先頭で踊り続ける。さらに歌いながらだ。

 パワーアップはレベルとスピードがアップしたことによって全体のボリュームが増したのである。

 ダイヤモンドのように光る名台詞がいくつも出てくる。「ショー・マスト・ゴー・オン」「周りが見えなくなったらおしまいよ」「ただ前を向いていればいいのか」「一つキズ付けば一つ表現が増える」「ステージは生物だ。ちゃんと決められたことをやるのがプロだろう」「キズ付くことを恐れて立ち止まってはいけない」。これらの台詞を味わうことで、スケールアップしたことが分かるのだ。

 名物の階段落ち。全20段の上から3段目から転がり落ちる堂本。そして大詰。「光一」は桜の大木の前でついに命を絶たれる。「桜の下で我死なん」だ。オーナーの前田美波里が言う。「いい人生だった!」。若い女性が多い観客にいい人生、燃え尽きる人生を期待しているのだろう。このシリーズが長く続く理由が分かるし、今後も成長していくのだろう。

 (平成28年2月10日)

深田恭子の初舞台                  

 深田恭子は想像を超えていた。安心感が伝わり、ピュアな姿で、何より誠実さがあったからだ。

 初舞台となったミュージカル『100万回生きたねこ』(東京芸術劇場)。「女の子」と「白いねこ」がその役柄。女優の、あるいは歌手の初舞台を見たのは数え切れないが、多くは期待に応え切れないものだ。生の舞台では嘘を付けない。演技力が瞬時に晒されるのだ。演技力でなくともよい。才能であり、魅力のカケラでも示せば上出来といえる。

 深田恭子の場合、例えば冒頭で「女の子なんて」を語るように歌う。登場した瞬間、何者でもない、深田恭子というオリジナルがあった。「女の子なんて大嫌い」「だね」と間(ま)を置いた台詞が力強い。言葉が観客席にちゃんと届いた。これは才能であり、恐らく稽古の賜物だろう。

 生々しいオトナの色気ではないが、清潔感がある舞台姿に色っぽさが出た。そこがピュアに映る。「白いねこ」を演じると、ケレン味なく、自然な感性を感じさせる。演技しているというより、楽しんでいる、遊んでいるといった表現に見えた。これは、易しい事ではなく、むしろ初舞台では難しい演技と言える。想像すれば、舞台の空気感が合っているのだ。そして、無心に役柄と溶け合う。ここに誠実さが見える。

 やるじゃないか、深田恭子!

 (平成27年9月3日)

犬を飼いたい横山裕                  

 関ジャニ∞の横山裕が主演の「ブルームーン」が期待を超える拾い物だった。

 13年ぶりのストレートプレイ、東京グローブ座に初出演、そして役柄が実家である浄土真宗のお寺の住職・向坂ユタカ。そんなハードルを軽々と超えた横山が拾い物だった。

 法事を終えて袈裟(けさ)を脱ぐ冒頭の場面から何と自然な演技なのだろう。軽薄そうで剽軽な父親役の山崎一との親子関係がまた自然そのもの。

 10年来の恋人なのに今だにプロポーズ出来ない気弱な、さらに慎重派の主人公。僧侶という職業に自信が持てない現実との格闘。タイムスリップした場所で奮闘する芝居の間(ま)もいい。ダンサーのトニー河村(上口耕平)と激しくぶつかる怒りの演技。ついに求婚する気恥ずかしさの表情。

 ロマンチックコメディに徹した鈴木裕美の演出にフィットしていた横山は、まさに現代青年。とりたてて演技を見せつけないのに、リアルなのは才能の賜物、稽古で流した汗の証拠。プログラムで犬、特にスタンダードプードルを飼いたいと語っているが、心優しいユタカを自然に演じた横山なら、プードルをきっと可愛がるに違いない。

 (平成27年6月1日)

滝沢歌舞伎は特盛り                  

 こんな言い方を許してもらえるなら、10年目の「滝沢歌舞伎」はそれまでが盛り沢山に詰まったメニューの大盛りなら、区切りの今回は特盛りだろう。

 新橋演舞場の4・5月公演「滝沢歌舞伎10th」は猛スピードで駆け抜ける3時間。タッキーの情熱と行動力、粘りとスタミナは驚異的。「ショック」シリーズの堂本光一と並ぶエンターテイナーだと思える。

 滝沢歌舞伎は「ヨ〜イヤ、サ〜」。この総踊りから幕を開け、これでもかと「和」の世界を見せつける。

 飛び六方があれば和太鼓を打ちまくり、大太鼓の上でタップダンス。はしご乗りもすれば2幕は悲劇の武将・義経。今回も大量の本水を使った大立ち回りによってタッキーたちは浴びた水が全身から滴り落ちた。

 北山宏光が6年ぶりに参加。目玉の一つ、舞台上の早化粧はSnow Manも加わった豪華さ。感動と勇気=B新演出と新場面、また懐かしい場面を入れ込んだ10年目は天井から小判が降り注ぐ大フィナーレだった。

 (平成27年4月24日)

「テニスの王子様」初体験                  

 遅ればせながら人気ミュージカル「テニスの王子様」を初体験。充分に楽しめた一方、まだまだ進化する部分を考える点でも脳を活性化できた。

 2003年に開始した1stシーズン。「青学VS不動峰」の副題がついた3rdシーズンの今回はTOKYODOME CITYHALLでの上演。今後、台湾や香港、大都市を回って5月17日まで続くというロングランだ。

 テニスに打ち込む中学生の物語とは聞いていたが、単なるスポ根ものではなかった。主役のチーム、青春学園中等部(青学)が一方的なヒーローかと思えば、悪役かと想像した対戦相手、不動峰も良い子たちの集団だった。青学の主人公・越前リョーマだけを応援したくなるのではなく、新たなチームとして生まれ変わる不動峰も応援したくなった。どちらも勝て!だ。

 目を見張ったのは出演者全員のテニスプレーが実に巧い。驚くべきことだ。試合の場面にやはり引き込まれる。それはピンスポット照明とラリー音が正確に溶け合い、映像を使った美術が成功したのだろう。。

 越前リョーマを演じた古田一紀は12歳の天才少年になっていた。右でも左でも打てる両刀遣い。あの錦織圭を重ね合わせるような速い動き、角度のある打球の演技には感心した。

 そしていいのはリョーマが無頼風の父親にテニスで向かっていくストーリー。昔、日本の男の子は父親とキャッチボールをするのが遊びであり家庭教育であり愛情のコミュニケーションだった。テニスを通した今の父子の脇筋を加えた物語がニクイ。

 「勝ち残るぞ!」「前へ進もう」「全ては勝利のために!」。目標を持った青少年たち、やるじゃないか。ただし、テニスの演技と同じ位、皆、歌が巧いといいのになあ。

 (平成27年3月2日)

ジャニーズWESTの宝探し                  

 関西発の7人組グループ、ジャニーズWESTが暴れまくる「台風n Dreamer」が9月28日まで東京・日生劇場で上演された。

 4月に「ええじゃないか」でメジャーデビューして初めての主演舞台。重岡大毅が出演しなかったメンバー6人の平均年齢は23歳。たった1人の昭和生まれが中間涼太。当方が定点観測している桐山照史は平成元年生まれで、他のメンバーも平成生まれの若者たちだ。何が言いたいかって?団塊生まれの当方も平成生まれも元気なら年齢などどうでも「ええじゃないか」という独り言。

 秘宝を見つけるため無人島でのサバイバル生活に挑戦する若者の悪戦苦闘の物語。宝探しVS超大型台風という訳だ。

 小山橙太を演じた桐山は持ち味のコメディセンスを生かしながら、これまでより演技力が付いた気がする。相手の台詞や芝居にしっかりと反応していたからだ。

 択桃(たくと)を演じた長身の小瀧望は、裏側でスポンサーと結び付いている役どころ。仲間を裏切り切れない心の揺れを必死に出していた。

 最後のショータイムで「ええじゃないか」を絶叫しながら会場と一体になった公演。日本へ向かう台風の多くは確かにWEST(西)からやってくる。(西)からの若者は恐るべし。まあ、西も東もどうでもええじゃないか。

 公演後、劇場出口で出迎えてくれたジャニー喜多川さんのお元気なこと。元気な若者も年寄りも国の宝だ。

 (平成26年10月21日)

三宅健の仇役                  

 V6の三宅健が出ている「炎立つ」(シアターコクーン・8月31日まで)を見る場合、ある覚悟をするといい。

 これは時代劇です。しかも平安時代末期。奥州藤原家の基礎を作ったキヨヒラ(藤原清衡)が主人公。歌う場面はあるけれど、ミュージカルではありません。しかも、戦闘場面はあるけれど、多人数の闘いにしても一人で、あるいは女優が演じるのが多い。以上だけでも覚悟を決めて見るのがよろしい。

 次ぎに、これは台詞劇です。俳優が発する膨大な台詞によって場面、状況を再現する演劇。つまり、見る人の集中力と想像力によって楽しみ方が全然違ってくる訳。忍耐が必要で、その覚悟をするとよろしい。

 さらに俳優の演技力を堪能する公演です。キヨヒラを演じたのが歌舞伎俳優片岡愛之助、ヨシイエは無名塾出身の新劇から出発した益岡徹、カサラが抜群の歌唱力を誇る新妻聖子、イシマルには井上ひさしさんが「この人は名優である」と言った花王おさむ。そしてユウの三田和代、アラハバキの平幹二朗は言うまでもなく名人級の舞台俳優。

 三宅健はそんな芝居、俳優たちと骨太の時代劇に出ているのです。さらに役柄がイエハラ(家衡)。キヨヒラの異父弟。父親が違う弟として生まれ、藤原家の頭領を力づくで奪い合う猛者といった武将。しかも、良くいえば仇役、悪くいえば悪役。実際は運命の子。母親の愛を強く求めながら、一番を目指しながら、夢を追いながら、無残な死に方をする悲劇の男。難役です。

 悪戦苦闘。これが三宅健の舞台でしょう。イエハラという役柄自体がそれ。時代劇という舞台での演技もそれ。三宅健という俳優の個性をどう生かすかもそれ。ファンはそれぞれ覚悟して見つめるといい。

 そのように見ているとイエハラの人物像が浮かんでくる。ナイーブで、やんちゃで、目立ちたがり屋で、愛されたくて−。イエハラの「炎」はメラメラと立っている姿が分かるでしょう。

 ジャニーズ系の俳優として、悪役、仇役が演じきれる才能。三宅健の方向性がもう一つ見えた!。

 (平成26年8月25日)

浜中文一の個性                  

 関西ジャニーズJrの浜中文一が「ガラスの仮面」(青山劇場・8月31日まで)で桜小路優を演じていた。

 舞台には「音楽劇ザ・オダサク」などに出ていたというが、配役とともに意識して演技を見つめたのは初めてだった。まず、この公演で印象に残った他の俳優から−.

 ヒロイン北島マヤに扮した貫地谷しほり。オーディションの場面で与えられたテーマの「毒」をいくつかのパターンで演じる。彼女の演技力が見事に発揮された。違う設定が明確に分るのが実力の証。

 ライバル姫川真弓を演じたマイコ。巧い。意思の強い令嬢をくっきりと描き出した。これは表彰ものの才能だ。

 プロダクション副社長・速水真澄の小西遼生。とにかく長身の格好いいスタイルが一際目立つ。

 秘書・水城冴子の東風万智子。姿勢がいい立ち姿、また、歩く姿に特長がある。颯爽としていた。ただし、観劇日(18日)は台詞を何度か噛む場面があって残念。

 月影千草の一路真輝。黒づくめの衣装、冷血のような性格描写、オーラを放つ存在感。文句なし。演出のG2は冒頭、「紅天女」に使われるだろう衣装を空中高く飛ばす仕掛けや、回り舞台、上下するステージを多用してスピード感ある舞台を作り上げた。その中で一番若い浜中が際立つような個性を発揮するのは至難の業だ。

 しかし−。先の演技陣に劣らない芝居を見せたのが偉い。マヤへの淡い思い、戸惑い、若者特有の自信喪失…。何より舞台俳優としての素質を持っている。大劇場の大舞台でも台詞はよく通っていたし、長身とは言えない身体を充分に使って、伸び伸びと演じていたのに好感が持てた。再演も期待したい「ガラスの仮面」である。

 (平成26年8月25日)

田口淳之介の癒し方                  

 KAT-TUNの田口淳之介がカーテンコールの舞台スピーチでこう話していた。

 「きょうで12回目ですが、段々と自分に(役が)近いかなと思う時がある。きょうは久しぶりに晴れ間が出たけれど、この後、雨のようですので、皆さん、傘持ってきましたか?」

 この姿を見ていて、演出のG2がプログラムの中で話していたように、田口はまさにフォレストガンプ的。「癒し効果抜群」の個性を持っていると思えた。

 東京グローブ座で上演された「フォレスト・ガンプ」(6月22日まで。同25〜29日・森ノ宮ピロティホール)が爽やかな舞台で、主演の田口の心根の優しさがそのまま伝わる公演であった。

 少年の頃、IQが75で、80以下は学校にも行けないような境遇だが、その少年フォレストは特別な才能の持ち主だった。何も知らなかったアメリカンフットボールでは超速の足の速さを見込まれ、スター選手にまでなる。女の子から教わった縄跳び、フラフープはわずか1回だけで上達してしまう。

 クロマチックハーモニカを吹けば、その心地良い音色で驚かせる。田口はその一つ一つの演技を実に自然にやってのけていた。

 東山紀之とのダブル主演だった「空に落ちた涙」でも高い身体能力を見せていたが、今回の初の単独主演では演技に質を上げていたのが成長の証。タイトルロールの「フォレスト・ガンプ」が嵌まったといえる。

 海老漁の事業が見事に当たり、大金持ちになるフォレスト。今公演のキャッチフレーズが「人生はチョコレートの箱のようなもの。開けてみるまでは分からない」。その通り!(6月9日所見)

 (平成26年6月23日)

八乙女光の悪の華              一日の生活イメージ

 Hey!Say!JUMPの八乙女光がシアターコクーン「殺風景」で父親と息子の二役で強烈な演技を見せた(5月25日まで)。

 隣人一家を殺害する菊池家の二男・稔、そして稔の父親クニオがその二役。昭和38年(1963)の若きクニオは炭鉱夫、平成16年(2004)となった時の父・国男は西岡徳馬が演じ、一家はヤクザになっていた。

 1960年代の当時はまだ元気一杯、パワー全開の時代。一方で平成となった時代背景は、菊池一家が勢力を失い、孤立している。そこで、トラブル、犯罪、殺人という異常で不快感が漂う理不尽な場面が続く。

 両親には隣人を殺せと命じられ、兄は犯罪に手を染めない逃げ腰。稔の八乙女はそんなおぞましい家族の中で、ピストルを持ち、何発も撃つ。父親クニオを演じる八乙女は、黒い短髪、スローモーションで舞台奥から出てくる。穴蔵から生まれたというので「モグラ」と呼ばれる炭鉱夫。酒場で喧嘩はするわ、頭に水をかけられたりと荒っぽい場面の連続だ。

 西岡、母親役のキムラ緑子、荻野目慶子、兄の大倉孝二ら舞台経験豊かな猛者の中で、八乙女は例えば大倉との財布問答でも互角の芝居によって悪の華を咲かせる。「体当たりの演技」とは褒め言葉としては適切ではない表現だが、全身全霊をこの役に打ち込む八乙女がいた。

 【写真】撮影:細野晋司

 (平成26年5月20日)

滝沢秀明の『和』の世界                

 新橋演舞場で上演中の「滝沢歌舞伎2014」はテーマの一つの『和』が一段と際立ったようだ。

 主演の滝沢秀明が演出も担当した公演。近い将来、世界(海外)を意識した意図がはっきりと見えた。

 「ヨイヤ〜サ〜」の掛け声で始まったオープニング「春の踊り」からすでに『和』の世界だ。「滝沢歌舞伎」だから当然ではあろうが、ショービジネスの王道、総踊りから幕を開けるのが嬉しいのだ。

 次ぎにすかさず「口上」。花道スッポンからセリ上がった滝沢は正座していた。白い羽織、袴の姿。清潔感、凛とした姿勢が場内に緊張感を与えた。

 主演したテレビドラマ「鼠、江戸を疾る」を構成した「疾風!鼠小僧]を初めて加えた第1部。思い入れが濃いという「義経」の第2部。さらに、女形へ変身する化粧の場面は益々速度を増し、影絵、和太鼓と淀みがない盛りたくさんの内容は海外に『和』を印象付けるに違いない。

 アドバイザーが市川右近、歌舞伎立ち回り指導が市川猿四郎という、スーパー歌舞伎を知り尽くした沢瀉屋一門。また、「義経」の所作(舞踊)指導が花柳典幸。このスタッフを集めて演出した滝沢の手腕は褒めていい。

 平成18年の「滝沢演舞城」から始まって8年。5月4日には通算上演回数450回となる。東京オリンピックが開催される2020年にも上演されているならば『和』を再認識してもらう絶好の機会になる。

 (平成26年4月22日)

若手のホープ、秋元才加           一日の生活イメージ

 AKB48を卒業した秋元才加がパルコ劇場「国民の映画」に抜擢されて、エルザ・フェーゼンマイヤーを演じている(3月9日まで。以下、大阪・愛知・福岡と続き4月6日千秋楽)。

 三谷幸喜・作・演出「国民の映画」はまぎれのない秀作舞台だ。ナチス政権下、宣伝大臣ヨゼフ・ゲッペルスの別荘に集められた映画関係者がホームパーティの中で踏み絵を迫られる。人間関係が実に面白く、それが秀逸の一つ。

 秋元のエルザは、若い魅力的な身体を武器にゲッペルスに取り入る新進女優。この起用は成功していた。

 女優陣は吉田羊、シルビア・グラブ、新妻聖子という美形で悩ましい肢体を持った人々。2011年の初演の出演者が大半で、今回の再演では秋元が新たに加入したのだが見劣ることなく、むしろ一番若い役柄が目立っていたのが得をしていた。ゲッペルスに自分から体を寄せて座る芝居の下心、夫人のマグダへの嫉妬といった感情の変化もいい。

 「ローマの休日」で舞台女優としての可能性を褒めた事があるが、若手のホープへ向かって欲しい。

 男優陣はゲッペルスの小日向文世、ヒムラーの段田安則、執事フリッツの小林隆、老優ヤニングスの風間杜夫が手練の演技。脚本、演出、俳優陣とも揃って何回でも再演して欲しい名作である。

 【写真撮影】阿部章仁

 (平成26年2月27日)

翼、優馬、朝幸に拍手!             

 日生劇場でのパフォーマンス「PLAYZONE・IN・NISSAY」で今井翼、中山優馬、屋良朝幸の3人に目を凝らした。正直明かせば、他のグループやタレントはチンプンカンプン(申し訳ない!)だからでして−。

 翼君には感心した。何がって? オトナになったなあ−というのが第一の感想。この公演で圧倒的な存在感があった。もっと言えば貫禄、そして座長としての風格さえ見えたものだ。恐らく何か自信のようなものを持ったのだろう。

 優馬君には感心した。何がって? アイドルとしての輝きが見えた−というのがその感想。何たって二枚目。その上、スタイルがステキ、そして芝居心がある。恐らく、何か目標があるのだろう。

 朝幸君には驚いた。何がって? もちろんお分かりでしょう。そのダンス力ですよ。一つ一つの振りが他と違う。踊りのキレの良さ、スピード。とにかく、しなやかで、大きく踊っても他の人と同じにピタリと合う。プログラムの中で「メッセージ性を持たせる」と書いてあったが、彼の踊りにはある意思を感じる。大したパフォーマーだ。

 以上、三人に拍手!

 追伸。

 今井翼君は今年、アッと驚く公演があるらしい。近い内、分かるでしょう。

 (平成26年1月15日)

中島健人君の汗が命中した             

 帝国劇場「ジャニーズワールド2020」(来年1月27日まで)で“貴重な体験”をした。てんこ盛りの場面の中でシェイクスピア作品を集めたパートだった。天井から吊り下げられたゴンドラが客席の頭上に下りてくる。その上で演技をするのだが、見上げていた時、何やらポトリと頭に一滴。「あ!冷て!」。それは汗のようだった。髪の毛のちょうど薄目辺り(ハゲではありません)に命中した。

 演じていたのはSexyZoneの中島健人君。その後、フライングのような形でクルクル回転する演技が続き、今度は落下してきた2、3滴がまた、命中した。

 若い女性ファンなら大喜びで汗を浴びたろうが、他人の汗というのはどうもねえ。座ったのが1階席の前から7列目。その周辺にはかなりの汗がしたたり落ちたと思う。

 この作品はとにかく、出演者の運動量が並みではない。若者たちは身体能力が高いので、走り、よじ登り、バク転もする演技の連続。汗をかく演技というが、まさに、命中した汗の体験によって彼らの息遣いまで教えられた思いになったのは確か。

 その中島健人君。汗はともかくとして、笑顔が印象的だった。ダンスの切れも良く、まさにアイドルの二枚目の顔立ちで、スタイルも格好いいのだ。命中した辺りから毛が生えてくると嬉しいねえーと思ったりして…。

 高く舞い上がる噴水に突入するわ、舞台上からは膨大な水が流れ落ちてくる公演。前列2、3列目の観客にはビニールシートが配布され、水浴び、汗浴びが愉快なステージではあった。

 (平成25年12月26日)

M田崇裕の立ち廻り             

 中村獅童主演の新橋演舞場「大和三銃士・虹の獅子たち」(10月3日〜27日)に出ていたのが関西ジャニーズJrのM田崇裕。銃士隊の花輪嵐がその役で、三つの視点を書いてみた。

 最初は殺陣。つまり立ち廻り。アレクサンドル・デュマの原作「三銃士」を関ヶ原の闘いから始まる日本の戦国時代に置き換えて銃士隊の花輪は闘うのが仕事。アクションシーンが多く、槍を遣うM田もやたら闘う。槍の立ち廻りが剣と大きく違うのは直線的な動作、振り回す殺陣なので技術が必要だからだ。

 一幕一景から本人が好きだというアクロバチックなアクション、そして二幕十三景の壮絶な戦闘場面となるクライマックスでは槍を振り回し、最後は敵の槍によって殺される。一人、笑みを浮かべて倒れる最期まで槍遣いは稽古の賜物だろう。身体能力は高い。

 次ぎがキャラクター。南蛮かぶれの剽軽者。お茶目な一面を持っている花輪、本人も多分似た面があるのだろう。ただ、関西弁でしゃべるのだが殺陣のマスターの次ぎは台詞術の勉強が先行きへの大切なステップだ。

 そして三点目。7日に見たカーテンコールでは獅童に「それでは締めの挨拶を」と促されて短い挨拶をした。

 「とにかく初心に戻って、ガムシャラにやっていきます。何かあったら、また来て下さい!」と先輩俳優の前で気後れしないトーク。所属する事務所の公演以外では初めての他流試合。歌舞伎俳優、大衆芸能や新劇俳優らに混じっての芝居は今後の肥やしになるはずだ。

 他では獅童が座頭として違和感がない風格も身に付けた。宝塚OGの真琴つばさは、もっと出番が欲しかったが、相変わらず口許が可愛い。早乙女太一は立ち廻りには自信を持っているだろうが、諏訪のアグリ役で出ていた母親の鈴花奈々に台詞術をもっと習うといい。文学座の高橋紀恵が淀君。和服での芝居だから手の使い方を工夫すれば充分、合格点になった。

 (平成25年10月22日)

成長した桐山照史             

  日生劇場「ANOTHER」で桐山照史君と再会した。同じ日生劇場で上演された「少年たち」の時、一人の興味深いタレントを見つけた、と書いたあの桐山君だ。

 今回の作品はジャニーズ事務所の先輩たちが産み育てたヒット作。夏休みに冒険旅行に出かけた少年たちが嵐によって船は難破。小さな無人島に流れ着いて起きる物語。桐山君もその一人だ。

 「少年たち」での目標が、存在感を出したいというものだったが今回はそれ以上に目立っていた。彼は大柄な仲間たちの中ではむしろ小柄。一方でガッチリとした体格、“和風イケメン”(と前回に書いた)というような顔付き。これがいい。

 劇中、彼のための「コントコーナー」のような一場面があった。出世したねえ、桐山君!。それは下手奥から飛び出た姿がなんと女装。長い金髪のかつらを被って、スカートを履いていた。満場、黄色い歓声が飛んだ。

 この女装は別として、芝居では力強い台詞で舞台狭しと動き回る姿はスピード感があった。一段と成長した、と思う。

 主役は中山優馬。こちらは長身のいわゆる現代的な美少年。仲間と離れ、一人、別の島に流され、無線を使って合流してから彼の物語が進んでいく。さすが主役としての存在感があった。

 観劇した9日、帝国劇場で上演中の「DREAMBOYS JET」の出演者が突然、舞台に登場した。飛び入りのハプニングか。双方の出演者が何やらトーク合戦を見せていたが当方にはさっぱり分からなかった。

 ところでラストがショータイム。踊りまくる若者たち。今月は二つの劇場でジャニーズ事務所の若アユたちが跳ね回った。

 (平成25年9月20日)

千賀健永のダンス力に圧倒された             

  2004年の初演からシリーズ10年目に突入した「DREAMBOYS JET」が帝国劇場で開幕した。物語はほぼ同様だが、対立の仕組みがカーレースに変わり、「49歳になって来年は50歳です」と劇中で報告したマッチこと近藤真彦、役名では伝説のドライバー、マサヒコの半生を描く映画作りが軸になった。

 中年マサヒコと若者3人が主役。若者とはジュニアレーシングスクールで同期だったタマモリ、センガ、ミヤタ。

 タマモリの玉森裕太は初の座長公演。笑顔がかわいいスター性がある。センガの千賀健永のダンスには目を見張った。もっと若い出演者よりも素早い動き、ダンスの振りのキレが抜群。3人の中でいちばん目立ったと思う。ミヤタの宮田俊哉は三枚目の役柄。本人もお笑い系に合っている。

 公演2日目の観劇。客席上手通路から舞台に向かう男性をミヤタが「あ、タマモリがやってくる」。本当はセンガの間違いで、そのセンガが「タマモリじゃない、センガです」と笑わせた。玉森が共演する「「ぴんとこな」のジェシーが観劇していることを話せば客席は「キャー!」。終演後にはジェシー君はもみくちゃになっていた。カーテンコールでは玉森が台詞を噛むと、これもファンは大喜びだった。

 マッチのヒットメドレーから始まる“新作”。この日はマスコミ招待日で、演出のジャニーさんがお客を見送っていた。「きょうはありがとう」と声を掛けてくれて、「若い三人が個性的で良かったですね」と話せば「マッチが出てくれました」。人の絆、心の繋がりをテーマにした作品。ジャニーさんの人柄が重なる公演だった。

 (平成25年9月9日)

坂本昌行でエルガヨを!           一日の生活イメージ

 V6の坂本昌行の舞台を見たのはいつ以来だったか。

 いずれにしても久方ぶりの舞台姿は落ち着きが出て、座頭の風格さえ感じさせて、少々驚いた。

 東京グローブ座でのミュージカル「シルバースプーンに映る月」(6月30日まで。7月3日〜6日・大阪サンケイホールブリーゼ)だ。

 彼が演じた敷島綾佑という男性は、これまでの役々とは異質だった。大会社の御曹司だが、悪友と酒浸りの放蕩三昧。専務である会社へは会議にも出ない。しかし、放蕩には隠された理由があった。

 足元をふらつかせた泥酔ぶりから登場した幕開き。早くも、ここから舞台俳優として一皮剥けたオトナの雰囲気さえ感じた。

 ここから二枚目半の役柄とキャラクターで演じていく。初めに風格と書いたが、実はこれが大切な急所。

 共演者が舞台経験豊富な強者たち。皆、個性的なのだ。透明感のある歌声を持つ新妻聖子、元・四季の鈴木綜馬は低音が響き渡り、実力派のコメディエンヌ戸田恵子。その中に混じって存在感を示せたのは大したものだ。

 最初の泥酔ぶりをしっかり酔っているように見せたし、三場での「ダンスは上手く踊れなくていい」が魅せた。スパニッシュダンスで新妻と、そしてホモを装う悪友の磯村(上口耕平)と踊った。この笑わせた演技が二枚目半という理由だ。

 いくつか着替えた衣装だが、ラストでは専務として会議に向かう時、バッチリと決めたスーツ。大劇場での「ゾロ」も良かったが、中劇場でも開花して、より舞台俳優として認知できた。

 料理の腕も良いようだが、近い将来、「ファンタスティックス」の主役エルガヨの彼を見たくなった。

 【写真】撮影:阿久津知宏

 (平成25年6月29日)

ゴールデンルーキー氷川きよし           一日の生活イメージ

 「氷川きよし特別公演」で浜町の明治座が熱狂の渦の中にあった。

 この劇場で2年ぶりの座長公演。「銭形平次〜きよしの平次立志編」と「氷川きよしコンサート」の2部構成だ。

 例え話の典型として登場してもらうのがプロゴルファーの石川遼と、歌手の氷川きよしである。二人の共通項がある。「待ってました!ゴールデンルーキー!」だ。

 10代の遼ちゃんが颯爽とデビューし、早々とプロ初勝利を挙げた時、一番喜んだのは先輩の男子プロだった。次々と新スターが進出していた女子プロゴルファーに対し、男子プロは人気が低迷。賞金も激減していた。遼ちゃんの出現で一躍、男子プロも水を得たのだった。

 きよし君も凄かった。「箱根八里の半次郎」を引っ提げて演歌の世界に名乗り出たデビュー。長く、若い男性演歌歌手が待望されていた時、まさに救世主の出現だった。

 新鮮な若いスターによって業界全体が光を浴びる。その典型が二人だった。

 第1部の芝居「銭形平次」は一昨年の「青春編」に続く「立志編」。第2部のコンサートでの挨拶を聞くと、人柄と人気の背景がよく分かった。「ボクは凡人ですから、人の何倍も、いや、何百倍も稽古をしないと、作品とかの役柄で伝えなければいけない事が身体に付かないのです」

 次ぎに来年はデビュー15周年になる。

 「本当に皆様のおかげです。初心に戻って、また新人氷川きよしになってやっていきたいと思います」。

 歌い終えた一曲一曲、必ず両手を膝に置いて最敬礼をする。「ゴールデンルーキー」は輝き続けていた。

 (平成25年6月17日)

稲垣吾郎の左手           一日の生活イメージ

 3回、観客は度肝を抜かれる。

 轟音から幕を開ける。雷鳴だ。さあ、スタートだ、というバトルの始まり、始まり。これが1回目。

 2回目が、顔面を叩かれ、土下座になり、足蹴にされる稲垣吾郎だ。

 そして3回目。吾郎ちゃんの“女形”だ。

 渋谷はシアターコクーンの二人芝居「ヴィーナス・イン・ファー」がその舞台(6月23日まで)。稲垣の役は劇作家で演出家のトーマス・ノヴァチェック。中越典子は女優のヴァンダ・ジョーダン。最初の轟音で舞台が明るくなると、トーマスは携帯電話で恋人の会話をしている。そこへ、オーディションに遅刻したヴァンダが乱入し、それからは二人の主導権争いの罵声。トーマスが脚色したマゾッホの小説「毛皮を着たヴィーナス」の本読み、演技が進む。

 稲垣の左利きは知られるが、その左手はヴァンダの白いドレスのファスナーを引き上げる。また、携帯電話を持ち、鉛筆でメモをしたり、サインをしたり、ソファーに横たわった中越に覆いかぶさり、左手は背中に回る。その左手ばかり見てしまった。演技をするサウスポーなのだ。

 作品のヒロインとして自分を売り込むヴァンダは、密室のスイッチの位置をなぜ知っていたのか。男物のフロックコートまで用意していたのは? 脚本のストーリー、台詞まで暗記していたのは? トーマスの恋人の事まで知っていた…。謎が多い女性である。

 そしてラスト15分。ついにトーマスは作中のヒロインの名でもあるヴァンダに扮し、女性口調の台詞を吐く。吾郎ちゃんの“女形”である。

 SMAPのメンバーの中で舞台出演が一番多いのが彼だろう。初めての二人芝居、劇中劇を演じる男性の本性を演じる。また、罵倒され土下座までしてボロボロになる役柄。

 黒い下着姿でエロティックな中越。黄金の左手の稲垣吾郎。吾郎ちゃんに舞台でのダブーはなくなった?

 【写真】撮影:引地信彦

 (平成25年6月17日)

“まっすー”の居場所は舞台         

  「STRANGE・FRUIT(ストレンジ・フルーツ)」を見に東京・グローブ座へ出かけた。

 この劇場で以前、見つけた小山慶一郎という俳優の才能について新聞に書いたことがある。

 今回の舞台の主役は増田貴久。小山と同じ「NEWS」のメンバーだった。

 彼が演じた千葉曜一郎は映像作家。1億円という大金を目指し、アートスクールプロジェクトに招かれた素質の持ち主で、定点カメラを設定して作品を作る男だ。ただし、この物語が恐いのは、死体を芸術作品にするのである。

 チャプター5の4月1日から始まり、チャプター1に戻っていく1年間のストーリー。

 結論はー。

 台詞の通りがとても良い増田(愛称は、“まっすー”というのだとか)は、舞台に合っている。正面を向いた時だけでなく、横や後ろを向いた時、台詞が聞き取りにくい俳優がけつこう多いのが舞台での演技だが、彼はそれがない。

 童顔で、まだ少年の青い果実のような26歳。きっと、脚本を読み込んできたのだろう。アートの世界と人生、恋、自分自身との関係を通して自分の居場所を探っていく難解さも内包している舞台だが、最後の場面。「カナ、帰ろうよ」が印象に残った。“まっすー”君。居場所は舞台だ!

 (平成25年5月31日)

タッキーはヨーイヤ・サー         

 「滝沢演舞城」が4年ぶりに新橋演舞場に帰ってきた。上演を続けた同劇場の歌舞伎が新しい歌舞伎座へ戻り、その最初の公演が滝沢秀明座長らの今公演だ(4月7日〜5月12日)。

 滝沢流の「和の世界」。日生劇場で打っていた滝沢カブキのスタイルに加え、いわば洗い直された今回は一層のスピードアップと新しさが注入されて演舞場に“歌舞伎”が戻ってきた感じだった。

 幕開き第一声が「春のおどりはヨーイヤ・サ〜」。タッキーの力強い声で始まり、4年間の空白を埋めるパワフルな舞台のスタートだ。

 舞台中央から客席へ、あるいは2階上手の客席から下手の花道へ飛んでいくフライング。仮面を次々と替える仕掛けや歌舞伎の手法のぶっ返り、早替わり。タッキーのケレン味で一番ビックリしたのが、大きな和太鼓を叩きながら座っている台がグルリと180度回転する大仕掛けだった。

 「和の世界」はてんこ盛り、特盛りだ。新曲「いつか」を披露すれば、「三番叟」や「滝の白糸」での水芸、[紅葉狩り」、そして「石川五右衛門」では楼門で「絶景かな絶景かな」と大きく張った声、また花道で飛び六方で引っ込みまで演じた。

 2幕ではお馴染みの「義経」。京の五條大橋で弁慶を倒す牛若丸時代から兄の頼朝に追われて奥州へ、そして壮絶な闘い。

 通算8年目に入ったというこの「滝沢カブキ」。上半身を丸裸にして和太鼓を叩き続けるタッキーを見て、グレードアップされたアイドルになった、と思えた。

 (平成25年4月21日)

はーちゃんは敢闘賞         

 AKB48のチームBメンバーという片山陽加は“はーちゃん”と呼ばれているそうだ。今、22歳のその彼女が宝塚歌劇のOGたち“猛者”に混じって出演したミュージカル「新幹線おそうじの天使たち」を見た(渋谷・アイア・シアタートーキョー。3月16日〜24日)。

 物語はタイトルそのまま、新幹線東京駅の掃除員が奮闘する姿を描いた根性ものだ。新幹線の折り返しのたった7分間で車内掃除を完了させる女性たちの努力、奮闘は世界中が仰天する早業。初めて片山の舞台を見たが、失礼ながら「精一杯」といった奮闘ぶりだった。

 他のキャストに負けない存在感を出したい…とプログラムの中で語っているが、木の実ナナが“地下の首領(ドン)”と言われる最古参、杜けあきが専業主婦から別世界に飛び込んだ母親、樹里咲穂がリストラされた独身の元OL、さらに松本明子、不破万作といった舞台経験豊かな俳優の中で存在感を出すのは並大抵でない。

 第1幕でお下げ髪で出てくる菜々子の彼女は、一人で弟を支える極貧の女性。トイレ掃除の担当になったのも時給が高いからだ。先輩の奈美(松本)から130円のカンジュースを貰って大喜びする時、その嬉しさと貧しさぶりを同居させて見せたのがお手柄。

 2幕ではポニーテイルの髪に変わって、生き生きとした今時の若い女の子になっていた。存在感といえば圧倒的な木の実、これまでの役柄とはまるで違った変人女性を演じた樹里、そして歌、踊り、芝居の三拍子揃った杜の順だと思うが、小柄な体を精一杯動かせて、しっかりと役柄の輪郭を出せたと言える敢闘賞。渋谷のどこにでも居そうなタイプだが等身大のタレントから個性的な女優へー。しっかり先輩の芸を盗め!

 (平成25年4月1日)

堂本光一の持続力         

 今年も「Endless SHOCK」が開幕した。博多座で4月30日に千秋楽を迎えるロングランの期間中、通算1000回上演となる怪物作品だ。帝国劇場で6日に見たのだが、改めて主演・堂本光一の強烈な意気込みを感じた。

 主題は変わらない。「ショー・マスト・ゴー・オン」。持続、継続。中断してはいけない。これはショーに限らないテーマだ。そして「限りある命を大切に」。表現を変えれば「愛」。まさに作品タイトルの通りだ。

 今回ほど、真剣に見つめたことはなかった。というのも、発見が多かったからだ。

 パワーアップした、というより、より多彩で緻密になった、と思う。これは作品。ニューヨークはオフ・ブロードウェイの小劇場のオーナーが前田美波里に変わった。共演者によってこうも変わるのか。前半、ショーの千秋楽の場面が新しくなったためか、コウイチも生き生きとしていた。

 さて、堂本光一の演技だ。

 22段の階段落ち。何回もあるフライング。全く、速度が以前と変わらない。驚いたのはこれではない。ダンスの振りだった。新しい振り付けがいくつもあったが、これが高度なテクニックが必要だと分かる。コウイチは難なくこなしていた。稽古の賜物、強烈な意気込みが支えているのだろう。

 ラストがいい。背景に大桜。燃え尽きた後だ。「桜の下にて我死なん」。美しい桜が咲く国、日本。未来を託すメッセージが伝わった。「ライフ・マスト・ゴー・オン」。

 (平成25年2月10日)

田口淳之介、ソロ出演での可能性   

 あえてジャンルを定義すれば「パフォーマンス」となるのだろう。

 東山紀之とKAT-TUNの田口淳之介がダブル主演の公演「NO WORDS NO TIME〜空に落ちた涙」が東京・新大久保の東京グローブ座で上演された(1月18日〜2月5日。大阪公演は2月8日〜12日)。

 タイトルのように、ジャンルを超えたパフォーマンスなので実に説明が難しい。ダンスが中心とはいえ演劇的な要素、パントマイム、またダンスもコンテンポラリーを含み、それより何より台詞が一切、ない。出演者が声を発することもない“ノーワード”なのだから−。

 立ち姿が綺麗な田口にまず目を見張った。

 細身、つまりスリムな二枚目。最初に出てくる時の衣装が銀色(と思えた)のスーツ、靴。これが似合う。ちなみに東山は黒系のダークスーツ、靴。これもよく似合う。

 田口は、KAT-TUNから離れたソロに舞台。一人で演じるのは初めて、しかも大先輩の東山とのダブル主役。プログラムには「体が固いので、風呂上りにストレッチを始めた」とあったが、そのダンスは褒めていい。かなりに稽古を積まなければ、とても共演の腕利きダンサーと太刀打ち出来ない踊りばかりだった。

 後半、衣装が逆転した。東山が銀系、田口がダーク系。この衣装交代は、物語がパラレルとなる、あるいは二人の男が重なる部分を意味しているように思えた。

 正直言えば、次々と展開するダンスの速度が凄いし、ダンスファンならいざ知らず、見ていて疲れる。そして退屈になるパートも多い。105分。そして、田口に関する結論。時代劇なら新撰組の沖田総司、シェイクスピア劇ならハムレットをやらしてみたくなった。台詞がふんだんにある演劇への挑戦も見たいものだ。

 それにしても東山には感心した。どこにあの年齢で、若さとスピードとキレがあるのか。ご立派でした!

 (平成25年1月31日)

桐山照史君に注目 

 東京・日比谷の日生劇場公演「少年たち」(9月4日〜同26日)で一人の興味深い才能を見つけた。関西ジャニーズJrのメンバー桐山照史だった。

 ジャニー喜多川の作・構成・演出のこの作品は、東京公演が昨年に続いて2回目。前回では発見し損なってしまったが、あえて出演者を中心に目を凝らしたところ、その桐山が目に留まったのだった。

 刑務所に収容されている数多くの少年たち全員が主役だろう。父親を殺してしまった、警官を殴った、サラリーマンを半殺しにした、そんな犯罪を犯した少年たちが所内でグループを作り、暴力的な所員と闘いながら、一日も早い出所を待っている。桐山が演じるのは「青09」。親友を殺した奴を締め上げたという罪だった。計画してきた脱獄を実行していく中、風呂場でシャワーを浴びる場面や、格闘のアクションシーンが、「俺たちは上等」、「僕に聞くのかい」といった曲を皆々が歌いながら超スピードで展開していく。

 7人の関西ジャニーズJrの中で、頭髪を染めていない黒髪の桐山は、あえて表現すれば“和風イケメン”か。あるいはオーソドックスな二枚目とも言える。

 上演プログラムの中でこう語っていた。

 「実は台本上では、そんなにセリフは多くない。けど、セリフが少ないことか分からないくらい、存在感で勝負したいと思ってるねん」。

 まさに、言行一致。セリフが多くはないが、舞台に立っている場面は少なくない。目立ったのが、特に脱獄に向かうところ。大喧嘩の場面だ。歌よし、アクションよし、ルックスよし。立派に存在感を示していた。「少年たち」の桐山照史、次の出演舞台も注目!

女は度胸・桐谷美玲の初舞台 

 桐谷美玲の初舞台を見た。既に公演は7月22日で終了した。「新・幕末純情伝」(シアターコクーン)。「沖田総司はオンナだった」。つかこうへいの破天荒な設定だが、青春を突っ走る若者群像劇だ。桐谷はその沖田の役で初舞台、初主演。実に度胸がいい。

 まず、その度胸とは、舞台上の事ではない。つか芝居は台詞が多い。特に主役は膨大な台詞のオンパレード。次ぎに、つか芝居はアクション、殺陣がめちゃくちゃに多い。そして、つか芝居は際どい台詞(SEX、差別、暴力的)にハラハラするし、際どい演技(SEXシーン)にもハラハラさせられる。何でもやるのが女優の心得とはいえ、それを当たりの前ながら、承知の上で彼女は舞台に立った。男は度胸、女は愛嬌というが、その度胸には敬服した。

 さて、舞台。

 劇中、桂小五郎の台詞に「負けてたまるか!」というのがある。これは何度となく多用される。この作品の主題の中心だと私は思っている。

 「負けてたまるか!」。沖田もそうだ。

 肺病という病、見下される差別、セクハラや愛する男の裏切りーに負けてたまるかである。

 桐谷は顔が小さい。身長と比較して舞台では小さく見える。細身、スレンダーの体格だ。動き、スピードとか力感のある男優に混じって、ひ弱く見えてしまう。それらをどう克服したか。

 白いTシャツ、シューズ。纏う衣装は赤。これで鮮やかに見せた。極論すれば殺陣は幼稚、キレがない。絡んでくる男優陣に助けられていたのが分かる。しかし、これは絶望的な欠点とは言えない。膨大な台詞。「私を裸にして、犯せ!」などといった台詞。決して怖けることなく言い切った。羞恥心を示さずに言い放ったのがむしろ驚きだった。

 幕開きから一向に笑顔を出さない緊張感が良かった。ギャグにも動じない。後半に向かうにつれてかわいらしい笑いがこぼれたが、時にやや地になるのが気になる程度。

 勝海舟の山本亨の殺陣、桂小五郎の吉田智則の絶叫台詞、坂本龍馬の押尾佑の二枚目半ぶり。つか芝居に嵌まったのはこの三人だが、紅一点、桐谷の初舞台は「負けてたまるか!」の度胸に、座布団1枚!。

あっぱれ、風間俊介

 風間俊介という俳優に注目しよう。ル・テアトル銀座で上演中(7月26 日まで)のマキノ雅彦(津川雅彦)演出の「男の花道」。彼の役は藤堂嘉助。蘭学の眼科医・土生玄碩(はぶげんせき)の弟子だ。玄碩は、失明の恐れがある歌舞伎の女形役者・加賀屋歌右衛門の目を手術し、見事に回復させる。嘉助はその師匠の世話、また、貧しさを助けるため、駕籠かきまでして収入を支える役どころ。

 第1幕で、助けを求めに来た歌右衛門門下の歌之助の話を聞く場面。中村梅雀演じる玄碩の横で両手を膝に置き、正座している。このただ控えているだけなのに雰囲気がある。ふくよかで、好人物で、師を尊敬していると分かる。大したものだ。また、師匠の物まねを演じているところが面白い。特徴をしっかり把握している芝居になっていた。

 「いいなあ、うちの先生は。たまらないなあ」という台詞で二人の師弟関係がすっかり分かる。梅雀との息がピッタリ、合う。ジャニーズ事務所で切っての演技派俳優だとプロフィールに書かれていたが、歌右衛門を演じる中村福助らの歌舞伎俳優、森本健介ら新派俳優、つかこうへい演劇の常連だった春田純一らジャンルが違う人々との共演は、間違いなく将来、役立つ。風間俊介、大出来、あっぱれじゃ!

秋元才加の将来性

 6月6日開票の「第4回AKB48選抜総選挙」の結果をスポーツ報知で調べた。いた、いた、秋元才加、20位。19121票。

 演劇ジジイがなぜAKB48? 答えは簡単。「ローマの休日」(企画・制作・梅田芸術劇場)の主役アン王女の演技を覚えていたからだ。公演自体はすでに5月27日で幕となっているが、銀河劇場で見た記憶を思い出す限り、書く

 映画のオードリー・ヘップバーン、日本の舞台では大地真央ら。今回は荘田由紀(鳳蘭の長女)とのWキャスト。初の大役と言っていい。2、3回の舞台経験があるようだが、しっかり彼女を正視するのは初めてのような気がする。

 まず、良い点。

 新聞記者ブラッドレー(吉田栄作)に支えられ、彼の部屋に入って行く最初の出。意識朦朧の中、フラフラと覚束ない足元の芝居がうまい。何より気品を出せたのが上出来だ。スタイルがいい。しなやかで、背筋がピンと伸びているからだ。

 次に第1幕の最後。大使館への電話連絡を取り消し、待っていた部屋の外からブラッドレーに向かって走るところ。別れ難い真情が体全体に見えた。

 さらに、笑顔。ショートヘアに変えた2回目の出が爽やかだった。髪を短くしたことで笑顔を見せる芝居。ヘップバーンの若い頃に似たチャーミングさと重なるほどだった。

 台詞だ。台詞廻し。声の調子、トーンが同じようでメリハリに欠ける時がある。品が不足して、従って王女というより一般人に見えてしまう。また、聞き取りにくい部分も出た。特に客席に背を向けた時の場面。仕草も優雅さに欠ける場面もあって、欲を言えば自分なりの工夫が欲しかった。これは、しかし舞台経験を積めば克服出来るはずだ。

 公演プログラムの中で彼女はこう話していた。「今まではクールな役が多かったので、アン王女のような可愛らしくて無邪気な女性を演じられることに、すごくわくわくしています」また、「AKBでの自分と重なる部分があるなと思ったんです。例えばAKBも恋愛禁止ですし、嬉しいことですが今は休みがあまりなくて、たまには旅行に行きたいとか、友達と遊園地に行きたいとか、アン王女と似た気持ちを抱くことがあります。お花見に行きたかったなあとか(笑)」

 総括。大役、しかも王女という難しい役柄を演じて、合格。舞台女優としての将来性は充分に発揮した。

PROFILE

■大島幸久メモ

 東京生まれ、団塊の世代。ジャイアンツ情報満載のスポーツ新聞(スポーツ報知)で演劇を長く取材。演劇ジャーナリストに生まれ変わったばかり。現代演劇、新劇、宝塚歌劇、ミュージカル、歌舞伎、日本舞踊。何でも見ます。著書には「新・東海道五十三次」「それでも俳優になりたい」。鶴屋南北戯曲賞、芸術祭などの選考委員を歴任。毎日が劇場通い。